おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は隔月で、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2017年2月号


おしまコロニー the 50-year history 1967 - 2017


今年、平成29(2017)年、「おしまコロニー」は開設50年という大きな節目の年を迎えます。この間、一貫として「生涯教育」の理念を掲げ、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、その歩みを重ねてきました。そこで、今年度の「ゆうあい」巻頭頁では、5回にわたってその半世紀の足跡を辿ってみたいと思います。



 

Ⅴ.変容期 その人らしい人生を支えたい

- 時代を超えて受け継がれていくこと -


平成20(2008)年4月 法人経営・運営計画の作成と実施

(権利擁護やリスクマネジメント、

 人材育成等の重点課題を盛り込む)

平成23(2011)年4月 法人理念「指針」に明記

平成29(2017)年10月 おしまコロニー開設50周年


風景写真

法人理念に込められた想い

「利用する方々から学び、一人一人が必要としているサポートを考え、実行する」。

現在の「おしまコロニー」が掲げる法人の基本理念です。そこには脈々と受け継がれてきた「個別化の推進と多様性の保障」という考え方が織り込まれています。人それぞれの異なる生き方、どれ一つとして同じものがない人生、その多様性に応じた支援を提供することこそ、私たち法人の存在意義だと考えています。そして一人ひとりの「らしさ」が尊重され、画一化されることなく、「個」が優先される支援のあり方をこの理念が謳っています。

これは新しい時代へのメッセージであると同時に、「利用者主体」の姿勢を貫いてきた「おしまコロニー」の伝統的な精神そのものであるといえます。決して高邁な信念ではありません。しかし愚直でありながらもきわめて自然体な支援姿勢を「おしまコロニー」はいつの時代も貫いてきました。これからも一人ひとりが「自分らしく」生き抜くために必要な支援を、障がいのある方々の内なる声から学び、その実現を目指し、確実に形としながら歩みを重ねていきます。

権利擁護、人材育成、リスクマネジメントの取組み

この「個別化の推進と多様性の保障」という考え方は、事業展開を画一的で大規模なものから、より個人のニーズが反映される小規模なハードへの転換を促しました。これまで難しいと思われていた自閉症の人たちや、障がいが重く介護度の高い人たちのグループホームの展開や日中活動の場の分散化など、施設整備の力点を、コンパクトなものを地域に点在させる方向へと変えました。そしてこの地域化と呼べるプロセスこそ、「共生社会(障がいの有無にかかわらず、共に支え合うこと)の実現」への手がかりです。そしてこの「共生社会」実現には、社会の根底に共に生きるための「尊厳と権利の保障」がなければいけません。

まず「おしまコロニー」は、平成11(1999)年に、職員の「倫理綱領・行動基準」を策定、いち早く権利擁護の取組みを内から始めました。福祉施設は身近にあればあるほど障がい者の権利を侵す危険性があるからです。平成12(2000)年には「オンブズマン制度(第三者評価・情報公開)」を導入しました。同時に全施設に「苦情解決制度」を取り入れています。そのような中にあっても、平成16(2004)年、翌平成17(2005)年とたいへん痛ましい事故が起きました。一件目は入浴中に、二件目は所在不明の末に麓の沢で、尊い命を失いました。悔やみきれない事故でした。

「福祉は人なり」、当然のことながら、立派な建物や設備(ハード)があっても、個々の職員、チームとしての職員集団の質(ソフト)が低ければ、本来の支援を提供できません。事故は「人」によって起きるものです。この事故を受け、平成18(2006)年に「リスクマネジメント委員会」を設置しました。取り返しの付かない事故を二度と起こすことのないよう、侑愛会全施設をメンバーとする委員会です。日頃の事故へとつながるちょっとした出来事もピックアップし報告・検証を行い、事故防止の取組みを組織的、かつ継続的に続けています。平成24(2012)年には「障がい者虐待防止法」が施行され、虐待防止の取組みも活動の一つとなり意識の高揚を図っています。私たち福祉従事者は、利用する方たちへの尊厳や権利を守る高い人権意識、感性豊かな人間性を備えることは当然のことです。そしてそれと同時に、多様化する障がい特性やニーズに応じた知識と技術の習得を常日頃から求められています。「安心」への支援は、職員の人格形成と共に、支援者としての高い専門性が担保されなければいけません。

そうした考えのもとに各種研修会(階層別、分野別)やセミナー、自閉症コンサルテーションの実施、海外研修(視察)への派遣、研究論文の表彰などを行い、人材育成には特に力を注いできました。法人設立から50年、その後半の歴史は、ハードからソフトへと軸を移し、支援を支えるための専門性をひたすら磨く歩みだったといえるかもしれません。そして、ますます多様化し複雑化する利用する方一人ひとりの「人生」が、安心で豊かであるために、「支え」の仕組みを探求し続けていく必要があると考えています。これからも侑愛会は、理念遂行のため「人作り」に励みます。

時代を超えて、受け継いでいくべきこと

今年、平成29(2017)年、「おしまコロニー」の歴史は「おしま学園」の開設から半世紀を数えることとなります。小さな保育園から始まった歩みは、北斗市、函館市の「街」の至るところまでそのフィールドを広げてきました。現在、グループホームなどの小さな事業を含めて、事業所の数は80を超えました。そこで働く職員の数も800人を優に超えています。しかし、私たち「おしまコロニー」に誇るべきものがあるとすれば、もちろんそうした法人規模に拠るものではありません。それらはきっと、目の前で支援を必要とする彼ら一人ひとりの瞳の奥にある「想い」や「願い」の中にこそ答えがあるのでしょう。その「答え」を探り続け、沿い続け、学び、そこから「人生」に形を与える支えとなること、時代を超えて受け継ぎ、引き継いでいくのは、そうした真摯な姿なのかもしれません。



      全5回 完  小谷 高大

top

前のページにもどる