おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2016年3月号


法人重点課題の取り組み その5
人材育成〜人材育成の取り組みを振り返って〜


函館青年寮 園長 前田 典之

福祉人材の育成は、質の高いサービス提供を追求していかなければならない私たち福祉事業者にとって大きな課題となっています。おしまコロニーでもこのテーマについては、これまで、人材の確保、定着、育成のそれぞれの側面から取り組んでまいりましたが、この記事では人材確保の法人の取り組みを振り返ることとします。

おしまコロニーでは、平成二十年度から、法人の内外に亘る諸課題を、PDCAサイクルに基づいて取り組む法人運営計画を策定してまいりました。平成二十年度から二十二年度の三か年で実施された第一期三か年運営計画では、まだ、法人重点課題の位置づけはありませんでしたが、「人材育成」は、法人としての重要で早急な取り組みを求められたのでした。

当時は、高齢者福祉の分野を中心として全国的に福祉人材の確保の困難さが表出し、社会的な問題として提起されるようになった時期でした。私どもの法人でも、受験者数の減少や四年制大学の学生の減少等採用関係において少しずつその様相が変化していったのが第一期三か年運営計画策定の時期と符合しています。

それまでも法人としては、質の高い人材の確保に取り組み、採用試験の時期には、北海道内外から多くの大学、専門学校、短大等の学生の皆さんに受験していただいていたものが、徐々に停滞期に入っていったのでした。

平成二十三年度から二十五年度に亘る第二期三か年運営計画のなかで、法人的な課題を短期、集中的に取り組む課題として位置づけた重点課題の一つとして、「人材育成(人材確保)」が設けられました。そこでは、人材確保の三か年計画として、受験者数、採用人数の数値目標を設定するとともに採用形態についても、正職員の採用枠の拡大をしていきながら、四年制大学、短大、専門学校等の学生のみなさんから魅力ある仕事、職場として評価、選択されるような取り組みを組織的に実行する等積極的な方策に転換いたしました。

法人のホームページ上の就職情報の掲載や学生向けの就職情報サイトの登録、活用の他に就職用パンフレットの作成を行い法人から就職の情報を積極的に発信すること、これらの媒体を使って学校や就職支援に携わる団体が開催する就職ガイダンス等のイベントにも積極的に参加するとともに、法人としても、毎年、定期的に就職説明会を開催等の取り組みを行ってまいりました。

平成二十六年度からの第三期五か年運営計画においても、引き続き、人材育成(人材確保)を重点課題として取り組み、平成二十七年度からはインターンシップを導入いたしました。

具体的な数値を出すことは控えさせていただきますが、平成二十三年度からの三か年計画における就職者数は、ほぼ計画通りで、多くの学生の皆さんに入職していただくことができましたが、平成二十六年度からはそれまでの約三割の減少と、引き続き厳しい就職状況であることは否めません。

おしまコロニーの職員数は平成二十一年度当初、常勤、非常勤を合わせて610名だったのに対し、現在は、750名と大きく増加しています。この間、新規事業の立ち上げもありましたが、制度改革や障がい福祉のニーズの多様化に伴い、スタッフの質量的な充実が求められた結果だともいえます。

今後も、多くの学生の皆さんに障がい福祉の仕事に興味、関心を持っていただき、おしまコロニーでの就職を希望し選択していただけるよう組織的に取り組んでいきたいと考えています。



 


平成27年度 大場茂俊賞受賞論文


侑愛荘での認知症を持つダウン症利用者の支援について

侑愛荘  小倉みはる
                 釣谷 聡

高齢期の知的障がい者支援施設である侑愛荘には現在七十八名の利用者がおり、利用者の平均年齢は七十歳を超えています。利用者は加齢化や疾病のために、歩行や食事、排泄などの日常生活動作が徐々に低下していきますが、そのなかでも認知症のあるダウン症利用者は、特に老化現象が早期に進み、てんかん発作を併発することでADLが低下していきます。侑愛荘への入所当初はお元気だった方でも、てんかん発作を契機に歩行状態が不安定になりはじめ、排泄が間に合わなくなることが多くなりがちです。どんな方でも老化現象が進めば心身機能の低下が進み、自力での歩行や食事、入浴が困難となっていきますが、ダウン症の方は、てんかん発作の頻度が多くなるにしたがって、特にそうした傾向が強くなります。また認知症を発症した初期には、食事や入浴への拒否が見られ、やがて発語も少ない状態となっていきます。

私達支援員は、侑愛荘において、認知症のあるダウン症の利用者に対して、試行錯誤しながらさまざまな支援を行っています。その支援について、そしてそこから得られたものについて、今回の論文で発表させていただきました。食事を中心に支援を調べ、まとめていくうちに、拒否には二つのタイプがあるのではと考えるようになり、さらに調べて行くうちに入浴でも同様の傾向が見られました。

その二つのタイプとは、「食べたくない」ので食事を拒否する、「お風呂が嫌い」なので入浴を拒否する「嫌悪型」と、食事介助者が「気に入った人ではない」ので食事を拒否する、自分の中で「今は入浴の時間ではない」から入浴を拒否する「こだわり型」です。タイプによって支援を変えて行うことで、時間を要しましたが、食事や入浴への拒否が徐々に少なくなっていきました。また、寮移動などの生活環境への変化にも敏感であり、多くの場合は、マイナスに作用する傾向にあることも分かりました。本人がなぜ拒否するのかを考え、コミュニケーションや普段の表情、動作から利用者を理解し、それに応じた支援を行い、声掛けや環境を整えることで、本人に安心感や楽しさを持ってもらい、無理せず、そのこと自体が本人の苦痛にならないように配慮した支援が必要です。

また、支援を行うことで重要なことが二点あります。一つは仮説に基づいた支援を継続して行うこと。もう一つは職員が利用者の状態を共有し、統一した支援を行うことです。試行錯誤しながらも支援を統一し、継続して行うことで、利用者の特徴や状態を把握しての支援を行うことができ、より良い支援へと繋がっていきます。失敗を繰り返してもそのなかで模索し、一つでもうまくいった支援があれば、良い支援ができたと言えるのではないかと思います。

老化現象は自然の摂理であり、だれもそれを止めることはできません。しかし、私達には、老化によってもたらされる機能低下を支えて差し上げるができます。私達侑愛荘職員は「利用者の笑顔のため」に支援を行っています。笑顔を求めて行う支援は、利用者にもきっと気持ちが届くと信じています。利用者の笑顔が一つでも多くなるよう今後も支援を続けていきたいと思っています。そして、この論文が、認知症のあるダウン症の方々への支援の一助になれば幸いです。この度は受賞させていただきありがとうございました。

医療的ケアの必要な子の保育

浜分保育園        石川恵子
                      大戸真紀子
                      小林まゆみ
                         楡井良子
                         宮川知子
                         本木孝子
                      山田佳代子

医療ケアが必要な児童生徒は平成二十六年度で七,七七四名と年々増加傾向にあり、保育園入所を希望する保護者のニーズは日々増大している。しかし、その一方で、保育園での受け入れは利用園児の体調悪化や重大事故に繋がる高リスクが懸念され、同時に医療職の配置が難しいという現状より受け入れが困難な状況が多いといわれている。そのような背景の中、平成二十四年度北斗市からの要請により障がい児保育の拡充として「医療的ケアの必要な子どもの保育」事業が、看護師、作業療法士が勤務する浜分保育園で開始された。

「医療ケア児の保育」に取り組む際、個別支援の取組に加え、医療的ケアを行うために必要な人員配置や室内環境の設定、一日の生活スタイルをどう組み立てるか、「医療ケア児の保育」とは、どのような保育が望ましいのかを日々模索しながら職員間で話し合い取り組んできた。

入園当初(二歳)、医療的ケアの必要性が高く、身体機能面の問題も顕著で細かな配慮が必要だったHちゃんは、集団生活に適応できる状態とは言い難く他児と関わる場面や時間には限りがあった。そこで、保育園では、体調管理を大前提に「保育時間を安全に過ごす事」を目標としながら、他児との関わりや経験を重ね一歩ずつ活動範囲を広げていけるよう取り組んでいった。そして、就学を控えた最後の年には、一日中、集団の中で過ごせるようになった。クラスの仲間と共に過ごす中で、仲間意識が高まり、子ども同士の関わりが自然に見られ始めるようになった。参加を工夫することにより、様々な活動に対しても意欲的に参加する事が出来た。そして、三月、Hちゃんは大好きな仲間と共に保育園を卒園する。

「医療ケア児の保育」には、医療と保育の連携は必然であるが、その役割に線引きする事は難しい。対象となる子どもの状態や保護者のニーズ、家族を取り巻く環境等、様々な状況を踏まえながら、一人一人に合わせた柔軟な対応が迫られる。私たちは、他職種同士が職種による立場の違いや、それぞれの役割を理解しながら情報を共有し連携を図っていく事の重要性と、流動的で柔軟な対応が求められる事を実感した。そして、これまでの取組の振り返りは、これからの「医療ケア児の保育」の在り方について改めて考え、気持ちを新たに取り組むための良い機会となった。

保育園という集団の中で、子ども同士が互いに多くの刺激を受け合い色々な体験から生活経験が広がる事は子どもの成長にも繋がる。それは医療ケア児にも同じ事だと言えると思う。

障がいの有無に関わらず、保護者の誰もが安心して子育てが出来る支援体制が望まれている中、全ての子ども達が安心して過ごし、共に育ちあえるよりよい環境を整える為にチーム一丸となり、これからも、大きな愛情で子ども達を包み込みながら成長の後押しをしていきたいと思う。

行動障害を持つ利用者Sさんへの個別的な支援を通じた取り組み

函館青年寮通所部    中野和子
                                工藤卓也
                                倉見信秀

今回、私たちはSさんへの支援を通して、利用者の目線に立ち、何を求め、どんなサポートを必要とし、そのニーズにどう応えていくのかを考え、実行することの大切さと利用者の状態に合わせた個別的支援が心の安定につながるということを学びました。

私たちがSさんの状態に困ったなと感じた時期が平成二十三〜二十四年です。具体的な事例としては叫ぶ・怒鳴るといった行為でした。それは不適切であることを伝えながら、そのような状態にならないように取り組みましたが、抜本的な改善には至らなかったのです。そこには、私たちがSさんの気持ちやおかれている状態を理解してあげる努力が足りなかったことも原因としてありました。

平成二十五年になると状態が悪化、集団の中にいることすら難しい状態になりました。周囲の声や物音ですら刺激となり、怒鳴ってしまうのです。ケース会議で何度も話合い、個別対応が良いのでは?との話も以前よりありましたが、集団活動から外れた個別活動の設定に少なからず抵抗感がありました。しかし、他の利用者が怖がってしまっている状態があること、何よりSさん自身の苦しみを取り除いてあげたいとの想いで個別対応を取ることを決めました。

平成二十六年からコンフォートルーム(個室)を増設。活動も少しずつ支援員とマンツーマンで行うことにしました。すると、叫ぶ・怒鳴る回数が激減したのです。また、Sさんを理解する為に五つの視点から分析することを始め、その結果、静かで穏やかな雰囲気の環境、本人の立場になって考え、想いや気持ちを察し、心情に添った言葉掛け、理解できるようにわかりやすく伝えるという以上のことが必要であると分かりました。

現在は穏やかな表情を見せることが増え、時には冗談を云って私たちを笑わせてくれています。

課題はまだありますが、今回学んだことをより安定した生活へと結びつけていけるように努力していきたいと思っています。

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