おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2015年9月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.13


侑愛荘 村田・羽馬
ねお・はろう  渡辺

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

「訪問記」もいよいよ最終回となりました。最後に訪れるのは、行政からの委託を受けて事業を実施する相談支援機関、四か所です。場所は、石川地区(函館市)周辺に点在しています。これら相談支援機関は、どのような重い障がいや疾病がある方でも、地域生活を安定的に継続出来るよう、多種多様な相談支援を行っています。障がいの有無にかかわらず、支え合って共生する社会づくりが求めらる中、今後ますますその中核的な役割が期待されるであろう、これらの相談支援機関を取材しました。

ぱすてる

ぱすてる・あおいそら

ぱすてる・あおいそら



夏の日差しが強く照りつける七月下旬、本日最初の訪問先である『ぱすてる』に向かいます。場所は、石川地区にあります。喫茶店のような洒落た外観ですが、どこかアットホームな佇まいが印象的な建物です。同じ法人でありながら、建物の門をくぐるのは三人とも初めてです。到着後、河村所長からお話を伺いました。

障害者生活支援センター『ぱすてる』は平成十一年、一市四町(当時の函館市、七飯町、上磯町、大野町、戸井町)から「障害者プラン(平成八年)」で示された市町村障害者生活支援事業の委託を受けて開設されました。在宅で生活するご本人やご家族について、日常的な相談への対応の他、各種福祉サービスの利用援助、福祉情報の提供、ピアカウンセリングなどの実施が主な事業内容でした。以来、増え続ける在宅ニーズに呼応するかのように、実施事業の数は増え続けているそうです。また、『ぱすてる』開設当時には一か所しかなかった相談支援事業所の数も、現在は十か所を超えるまでになりました(函館市、北斗市、七飯町の二市一町のエリアにおいて/他法人では『函館一条』など)。この春には、この地域における、これらの相談支援事業所の中心的役割を担う「基幹相談支援センター」の指定を受けることになったそうです。

現在、『ぱすてる』の相談支援員は六名。二十四時間、三百六十五日体制で相談を受け付けています。ちなみに昨年度一年間の相談件数は、延べで五千件を超えたそうです。相談内容で最も多いものは、「福祉サービスの利用に関すること」、他にも「不安の解消や情緒安定に関すること」「日常生活を送るうえで困難なこと」など様々です。社会に出てから発達障がいと診断される方からの相談が多く寄せられるようになったり、不登校や引きこもりに関する内容のものも以前より件数が増える傾向にあるそうです。

ぱすてる事務所内

河村所長は「中には、何に困っているのか自分でも分からなかったり、聞きたいことを上手く表現出来ない方もいらっしゃいます。そうした時には、根気よく丁寧に聴き取り、相手の立場に立って一緒に考える姿勢が大事となります」と話してくれました。また、先月号で『アシスト・ほくと』の長谷相談員も話していましたが、「連携」の大切さを何度も教えてくれました。

過去の「ゆうあい」には、『ぱすてる』の名前の由来が書かれていました。多くの色が混ざり合って、明るく優しい色が出来るパステルカラーのように、様々な人や地域が手を取り合って支え合うような地域づくりを支えたい。今日の見学からは、開設当初から受け継がれるモットーを感じ取ることが出来ました。



すてっぷ

すてっぷ

次に、しょうがい者就業・生活支援センター『すてっぷ』に向かいます。ここでは、細岡主任よりお話を伺いました。『すてっぷ』は平成十五年、ジョブコーチ(職場適応援助者)支援事業を実施するために開設されました。二年後の平成十七年には、北海道から障がい者就業・生活支援センターとしての指定を受けることになります。事業内容は、障がいのある方の就業生活に関する相談支援です。求職相談から職場定着への支援、その後のフォローアップも行っています。特徴的なのは、障がいのあるご本人だけでなく、障がいのある方を雇用する企業も支援対象としていることです。障がいの特性や雇用管理などに関する助言を行います。ケースによってはジョブコーチを派遣して、集中的な支援を実施します。ここでもやはり「連携」が重要のようで、ハローワークや障害者職業センターを初め、教育機関、就労支援事業所などとも密接なパートナーシップを築いているようです。

細岡主任によると、新規登録者数は毎週一,二名程度のペースで増えているそうです。求職相談については、希望される方にハローワークの求人情報の提供などをしていますが、メインとなるのは「就職」、「職場定着」に向けての相談支援です。中でも「職場定着」が重要であるため、「就職」の際には三日間の職場体験の期間を設けています。これは、求職を希望する方ご本人と、雇用を検討する企業のより良いマッチングを実現するために欠かせないものだそうです。

一通り説明を受けた後、実際に『すてっぷ』が支援する方が働く企業に同行訪問させてもらいました。担当者のお話によると、障がい者雇用をするのは初めてのことだったそうです。そのため、ジョブコーチの支援を利用して、慎重に職場定着を図っていったそうです。今では、任せる清掃業務への信頼も厚く「無くてはならない人材に育ってくれている」とのことでした。



あおいそら


お昼休憩を挟んで、今度は発達障害者支援センター『あおいそら』に伺いました。場所は、先ほどご紹介した『ぱすてる』の二階にあります。ここでは、小笠原コーディネーターよりお話を伺います。

『ぱすてる』が平成十一年に開設されてから約一年後の「おしまコロニー福祉セミナー」で次のような報告がされました。「自閉症児者やその家族が地域の中で当たり前の在宅生活をするための困難さは想像をはるかに超えたものだ。〜中略。ぱすてるの報告では相談件数の二十四%が自閉症関係であり、いかに自閉症児者とその家族の在宅生活が困難な問題を抱えているかを示唆している」。

平成十三年、おしまコロニーは長年にわたる自閉症支援での実践を背景に、自閉症センター『あおいそら』を開設しました。制度の裏付けのない任意事業としてのスタートでしたが、翌平成十四年には北海道から自閉症発達障害者支援センターとして認可を受け、平成十七年に現在の発達障害者支援センターと名称が変わり、今日に至っています。

現在のスタッフはコーディネーターが四名、事業内容は「機関(ご本人を支える学校や福祉施設等)支援」「(自閉症理解に関する)普及・啓発」「(ご家族や支援者向け)研修会の企画・運営」「個別相談(予約制)」などです。現在、対象エリアは七振興局と広域にわたるため「個別支援」での対応には限りがあり、「機関支援」に比重を置く傾向にある、とのことでした。「機関支援」に比重を置くもう一つの根拠は、「私たちのような専門機関だけでなく、地域の中で支える仕組みをどのように整えていくか。専門機関任せではなく、発達障がいに関する理解を深めて皆で支え合っていくことが大切になると思うんです」と小笠原コーディネーターは熱く語ってくれました。



めい

めい

本日最後の訪問先は、渡島・檜山圏域障がい者総合相談支援センター『めい』です。石川地区といっても、少し離れた函館市美原の住宅街の一角にあります。アパートの中にあるので、お宅にお邪魔するような気分です。しかし、足を踏み入れると、まさに相談室の風景そのもの。壁には大きな函館市の地図が貼られ、ホワイトボードは出張や研修、会議の文字で埋め尽くされています。『めい』は事前の下調べの中で一番事業の内容が理解しにくかった(すいません)のですが、事業が似た『ぱすてる』との違いも含めてよく勉強したいと思います。

説明は、道下相談員がしてくれました。個別相談などに応じる相談支援事業所としての役割は『ぱすてる』と同じですが、特徴的なのは、北海道から「広域相談支援体制整備事業」の委託を受けて行う、具体的な地域生活支援体制づくりへの取組みだそうです。対象エリアは、渡島・檜山圏域(推計五十万人)と、途方もない広さです。もちろん、奥尻町なども範囲に入っています。

「個別の相談支援を"小さなケアマネ(ケアマネジメント〜福祉や医療などのサービスと、それを必要とする人のニーズをつなぐ手法のこと)”、地域全体に働きかけて変革を促す取組みを"大きなケアマネ”と呼ぶことがあります。"小さなケアマネ”は相談支援業務の最も基本的なものです。しかし、それだけでは解消出来ない課題が地域の中に山積していますし、地域間格差も大きいのが実態です。私たちのように相談支援に取り組む者は、"小さなケアマネ”の解決のみに満足するのではなく、いつも"大きなケアマネ”を意識した取組みを進めなければならないと思っています。そうでないと、障がいのあるご本人やご家族が暮らしやすい、本当の意味での地域づくりは進んでいかないからです。市町村のエンパワメント(内発的な力を持ち、自らの生活を自らコントロールできること、または、自立する力を得ること)を引き出すことによって、街自体が変わる事例を何度も見てきました。私たちのような専門機関を必要としなくなるほど、それぞれの街の地域性が活かされた誰もが暮らしやすい仕組みが整えられていくことが一つの理想です」



先ほどの小笠原コーディネーターの話もそうでしたが、道下相談員のお話を聞きながら「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という諺(ことわざ)が思い起こされました。単純に「応える」「してあげる」のではなく、自分たちで出来る方法を「教える」ことが大切。更に一歩進んで「自分たちで考える力」や「エンパワメント」を引き出していくことが、もっと大切。この考え方は、私たちの直接支援での仕事にも通じる大切なことのように感じました。



 

十三回にわたって掲載した『訪問記』も、今号で最終回を迎えました。受入先や派遣元の事業所の調整、取材から編集作業など、毎月締め切り綱渡りの日々でしたが、掛け替えのない貴重な学びや、出会いの機会を頂く充実したものでした。私自身、初めて訪れる事業所も多かったのですが、どこも初めての気がしませんでした。それは、至極当たり前のことだったのかもしれません。おしまコロニー開設の精神は、時代を超えて、脈々と川の流れのように受け継がれ、隅々の事業所に至るまで共通して息づいているからなのでしょう。お世話になった関係者の皆さまには、改めてお礼申し上げます。次の連載企画、乞うご期待(…今のところ全く未定です)。

(ゆうあい編集委員 小谷 高大)


ぱすてる

事業種別:障害者生活支援センター

開設:平成11年

すてっぷ

事業種別:道南しょうがい者就業・生活支援センター

開設:平成15年

あおいそら

事業種別:発達障害者支援センター

開設:平成13年

めい

事業種別:渡島・檜山圏域障がい者総合相談支援センター

開設:平成17年

top

前のページにもどる