おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2015年7月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.11


明生園 増田・宮下
おしま学園  村上

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

今回は、当別地区(北斗市)にある障害者支援施設『侑愛荘』と、『生き活きゆうあい』を訪問します。前者は、高齢期にある方たちを対象にした施設として開設されました。障がいのある方たちの人生を切れ目無く支えようと、各ライフステージに必要とされる支援環境の整備を目指していたおしまコロニーにとって、その開設は「必然」とも呼べるものでした。後者は、北斗市から委託を受けて実施する、地域にお住まいの一般高齢者向けのデイサービス事業です。

『侑愛荘』の開設から約四十年、高齢期支援の現在(いま)を取材しました。

侑愛荘

侑愛荘本荘

強い日差しの中にも、爽やかな風が心地良い五月下旬、取材先の『侑愛荘』に向かいました。場所は「ゆうあいの郷」入口付近左手にあります。煉瓦(れんが)色をした重厚な外観です。ここは「本荘」と呼ばれる、昭和五十一年の開設以来、長く使用されている建物です。向かって正面には、平成十一年に増築された「新棟」があります。さらに昨年には、この「新棟」と渡り廊下でつながった「新棟別棟」が増築(ゆうあい505号掲載)されています。

侑愛荘新棟

新棟(平成11年築)

侑愛荘新棟別棟

新棟別棟(平成26年築)

到着後、祐川園長からお話を伺いました。『侑愛荘』が開設されたのは昭和五十一年のことですが、コロニーが高齢期に特化した施設の必要性を感じ、本格的な準備を始めたのは昭和四十年代後半のことでした。成人施設(新生園など)において、加齢を主因とした課題(健康面や生活リズム)がクローズアップされる人たちが増え始めていたのがその理由です。当時、高齢期支援の諸課題が全国的に提起されつつも実践例は殆ど無く、『侑愛荘』の開設は極めて画期的な試みであったそうです。

現在の『侑愛荘』の説明を受けました。五月現在の利用者数は七十八名。平均年齢は六十九歳、最高齢の方は九十歳になるそうです。平均年齢の推移ですが、開設当時の昭和五十一年は四十五歳、平成七年には六十歳を超えたそうです。また、六十五歳以上の方が約八割を占めているそうです。ちなみに、私(宮下)が所属する『明生園』でも加齢に伴う介護や医療ニーズの高まりが大きな課題となっています。平均年齢は約四十八歳です。高齢化と支援度が単純比例するものでないことは理解していますが、それでも、健康管理や生活全般の介護支援の比重が、非常に大きなものであろうことは容易に想像できます。

高齢になると、心身の機能低下などによって様々な疾病を複数抱えるようになります。そこで、外部の医療機関への通院支援が行われるわけですが、一番多い年には年間千五百件もの件数があったそうです。一日にすると、平均四〜五件。日によっては、職員が通院に明け暮れて施設には人がいなくなり、施設内に残る大多数の利用者の方たちへの支援に支障が出ることも少なくなかったようです。そこで、現在は『ゆうあい会診療所』への移行や往診、通院先の集約等の工夫により、件数は一時の半分程度まで減らすことに成功しているそうです。そうした通院問題の解消などの工夫により、施設内の日中活動や入浴支援などの日課を整えることが出来るようになった、ということです。

午前の日中活動が行われる時間となったようで、見学させてもらいました。場所は「新棟」の食堂、兼ホールです。ステンドグラスを通して注ぐカラフルな陽の光が、素敵な雰囲気を醸し出しています。日中活動支援担当の職員を中心にして、二つの人の輪が出来ています。内容は「遊びリテーション」と呼ばれる、楽しみや、遊び的要素を含んだプログラムです。笑い声が絶えない温かい雰囲気の中、利用者の方たちは自然に体を動かしています。中でも、「話芸」とでも言えるでしょう、輪の中心にいる職員の方の話やアクションがとても面白く楽しいのです。私も自然と笑顔になり、雰囲気に引き込まれてしまいます。周囲の職員の方たちも優しく声をかけたり、スキンシップをして活動を促していました。体力的な負担が少ない内容に見えますが、水分補給や休憩はしっかり行われていました。この午前の日中活動(一時間)は、出来るだけ全員が参加出来るようにしているそうです。一方、午後のメニューは「レクリエーション」です。基本的には自由参加で、「午後はゆっくり過ごしたい」という方には勧めていないそうです。カラオケや塗り絵、紙芝居や工作など、趣味的な内容のものを用意しているそうです。

午前の日中活動

次に、生活空間を見学しました。すでにご紹介したとおり「本荘/三十一名(昭和五十一年築)」、「新棟/二十三名(平成十一年築)」、「新棟別棟/二十四名(平成二十六年築)」、三つの建物で一つの『侑愛荘』を構成しています。新しい建物ほど、高齢期支援を行うのに使い勝手が良く、個別な空間に配慮された作りとなっているのが分かります。それは同時に、利用者の方たちの高齢化の進行を見通して、それに備えた環境作りをすることがいかに難しいことであるかを示していると言えるのかもしれません。利用者の方たちの状態像やニーズは、『侑愛荘』が開設された当時と比べて、大きく変化していることを垣間見たような気がしました。

ここでは、昨年出来たばかりの「新棟別棟」をご紹介します。居室は全て個室で、十七部屋あります。全体の居室の数は増えましたが、定員は増えていませんので、個室化率は今までの五十%から七十五%にまで上がったそうです。共有スペースのフロアーについては、イスやテーブル、洗面スペースに至るまで、設備の一つひとつに、高齢の方が快適に生活を送ることが出来るような工夫が凝らされているのが分かります。もちろん、冷暖房等の空調は完備、段差などもありません。浴室については、大浴室と個浴室が用意されています。大浴室は、スロープが取り付けられているので、シャワーキャリー(入浴専用車イス)に座ったまま浴槽に出入り出来る構造となっています。また、個浴室については、安全安心とプライバシーが両立された作りとなっています。浴槽は、特注品だそうです。

大浴室

大浴室

個浴室

個浴室




侑愛荘支援指針

高齢期支援の意思一致


●2010(平成22)年度一年間をかけて、毎月全体会議を開催し、策定。

暮らしやすい環境において

職員、他利用者との親密で良好な人間関係、信頼関係の中で

老化現象、機能低下をできるだけ軽減しながら

適切な介護を受け、機能低下をカバーしながら

健康に、または疾病と上手につきあい、管理し

個人のペースで、ゆとりのある、趣味・嗜好をいかした充実した余暇を楽しみながら

施設外との接触、社会との交流の中で

笑顔の多い生活を人生の最期まで過ごしたい



上にあるのは『侑愛荘』の支援指針です。平成二十二年に毎月一回、職員の全体会議を開催し、全職員で一年をかけて作り上げたものだそうです。『侑愛荘』の支援が目指すもの、それが実現すべき価値などが明らかとなっています。祐川園長のお話によると、『侑愛荘』ではここ数年、入所者の約一割がお亡くなりになるそうです。支援指針の一番最後には「笑顔の多い生活を人生の最期まで過ごしたい」と記されています。人生の総仕上げともいえるこの高齢期において、掛け替えのない一日一日を少しでも多くの笑顔とともに過ごしていただきたい。この一瞬に代えが利かないからこそ、心を込めて感謝の気持ちをもって支えたい。高齢期支援を行う職員の方たちの、そんな誇りや気概が伝わってくるような取材となりました。

生き活きゆうあい

生き活きゆうあい

昼食を『侑愛荘』で利用者の方たちと一緒に頂いた後、『生き活きゆうあい』が活動する「茂辺地住民センター」に向かいました。到着後、田邊支援員から事業の説明を受けました。

『生き活きゆうあい』では、北斗市から委託を受けて「生きがい活動支援通所事業」を行っています。現在、北斗市で同じ事業を行う社会福祉法人は、他にも四箇所あるそうです。地域にお住まいの、概ね六十五歳以上のご高齢の方(介護保険の対象とならない方)を対象にしています。現在の登録者数は百六十二名とのことです。出前デイサービスのようなスタイルで日替わりの会場を拠点にしています。自宅から足を運んで仲間と集い、交わることを通して、生活の潤いや楽しみ、ひいては生きがい作りの一助となることを目指しているそうです。茂辺地の他に、七重浜や久根別などの住民センターでも活動が行われているそうです。内容は、簡単なゲームや軽体操、手芸等の趣味的なものです。活動が行われている部屋へ入ると、楽しそうな歓声が上がっています。皆さん、輪投げゲームを楽しんでいる真っ最中のようです。終始、笑いが絶えず楽しい雰囲気(担当職員の、盛り上げ方がここでもやはり秀逸でした)なのですが、どの方の表情も真剣そのものです。そうしていると、「ゆうあい取材班チームにもやってもらいましょう!」とお声がかかり、飛び入り参加することに。『生き活きゆうあい』職員チームと対戦したのですが、本気で楽しんでしまいました。その後、茶話会で皆さんとお話しすることが出来ました。中には九十八歳の方もいらっしゃったのですが、大変お若く、矍鑠(かくしゃく)とされた姿が印象に残りました。



取材前に『侑愛荘』開設当時の園内の様子が書かれた「ゆうあい」のバックナンバーを読んできました。そこには、一般就労する方や、自分で自由に入浴や買い物を楽しむ方などの姿が紹介されていました。隔世の感があります。老化が進むことによって、今日出来ることが、明日出来なくなるかもしれない。だからこそ、今日という一日、この一瞬を悔いの無いものに。そんな、支援者の心意気や優しさに触れた取材でした。ありがとうございました。



侑愛荘

事業種別:障害者支援施設

開設:昭和51年

定員:80名/短期入所2名

生き活きゆうあい

事業種別:生きがい活動支援通所事業

開始:平成16年

利用対象:概ね65歳以上の、介護保険の対象とならない方

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