おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2015年6月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.10


函館青年寮 岩谷・侑ハウス 廣瀬

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

今回は、当別地区(北斗市)にある障害者支援施設、『ねお・はろう』と『星が丘寮』を訪ねます。前者の前身である『第二おしま学園』は、第二種自閉症児施設として認可されました。その後、児童福祉法改正を受けて、一昨年に『ねお・はろう』と名称を変え、成人を対象とする障害者支援施設に再編されました。後者は、成人になった自閉症の方たちを支える暮らしの場として開設されました。おしまコロニーが、自閉症の方たちへの一貫とした支援体系を形作る上で、中心的な役割を果たして来た両施設を取材します。

ねお・はろう

ねお・はろう

爽やかな青空が広がる四月下旬、最初の訪問先である『ねお・はろう』に到着しました。場所は「ゆうあいの郷」の右端、『七飯養護学校おしま学園分校』の隣にあります。本園舎は、緑が濃い杉林を背景にした白い建物で、大きな窓ガラスには明るい春の陽光が降り注いでいます。

到着後、仙福課長より、『ねお・はろう』の概要や、その成り立ちについて聞きました。『ねお・はろう』の前身、『第二おしま学園』は、全国的に見ても前例の無い「自閉症児の療育に取り組む専門施設」として昭和五十三年に開設されました。昭和五十五年、国は自閉症児の専門施設を認める法改正を行い、全国で初めての第二種自閉症児施設としての認可を受けることになりました。その後、佐々木正美先生(当時:神奈川県小児療育相談センター所長)を通じて出会った「TEACCHプログラム」に学び、その構造化のアイデアを取り入れた実践を重ねていくことになります。これ以後、強度行動障がいにより、生活場面や外出時において困難さが見られていた方も暮らしの質が改善されていく様子に、「TEACCHプログラム」による実践の成果を強く感じるようになったそうです。『第二おしま学園』は、自閉症児に一貫性のある支援を提供できる全国でも数少ない施設の一つだったと言えるでしょう。

その後、本園舎にて各寮の居室や設備の見学をした後、利用者の方たちが活動する作業棟を見学させていただきました。『ねお・はろう』の活動班は現在三つあり、支援の狙いや適性に応じて構成されているそうです。内容は作業活動が中心で、「製函(身欠きニシンの箱作り)」「紙作り(牛乳パック加工)」「古紙リサイクル(回収)」「EMボカシ肥作業」「ペーパーログ作成」「空き缶・ペットボトル潰し」などのメニューがあります。全ての作業種を見せていただいたのですが、紙面が限られるので、そのうちの幾つかご紹介します。まずは「EMボカシ肥作業」です。EM菌と呼ばれる微生物資材を利用してボカシ肥料を作る作業です。このEMボカシ肥、生ゴミに混ぜると良質な肥料となり、また畑や花壇に混ぜると微生物の力で土が豊かになるそうです。この日は、あいにく作業風景を見ることができませんでしたが、注文が入ると利用者の方が「ふるい掛け」「粉砕」「袋詰め」などの作業を行うそうです。

EMボカシ肥

次は「空き缶・ペットボトル潰し」です。利用者の方は十秒と掛からず、次々と上蓋を切り抜いていきます。そのあまりの手際の良さに驚きました。この作業は、行政の協力を得て始めた、長年取り組んでいるものです。最後は、「ペーパーログ作成」です。ペーパーログ(紙薪)とは、水で濡らした古新聞を固めてレンガ状にして、薪や炭などの燃料補助材として使う物だそうです。作業室では、利用者の方たちが「新聞紙ちぎり」「シュレッダー裁断」などに取り組んでいました。レンガ状に固める「圧縮作業」で使われていた圧縮機(写真)は、『函館工業高等専門学校』の生徒さんたちが研究の一つとして作ってくれた機械だそうです。

圧縮機

こうした作業活動以外にも、身体障がいを併せ持つ利用者の方たち向けの運動プログラムもあります。そこでは、理学療法士が作成したメニューに基づいて、ウォーキングや、サーキットトレーニングと呼ばれる全身運動を取り入れているそうです。「いずれの方も年齢はそれほど高くないのですが、今後も心身の健康や生活の質を維持するためには、欠かすことの出来ない大事な活動なんです」と教えてくれました。

以上、どの活動においても、利用者一人ひとりの特性や活動スタイルに柔軟に合わせた環境が用意されており、個別化されたスケジュールやワークシステムなどを用いて視覚的に構造化された支援が展開されていることを知ることが出来ました。

平成二十四年、児童福祉法の改正により「第二種自閉症児施設の廃止」、「十八歳以上の利用者が在籍する児童施設の今後のあり方」などが示されました。それにより、『おしま学園』と『第二おしま学園』との間で利用者の再編を行い、平成二十五年に『第二おしま学園』は『ねお・はろう』と名称も新たに、成人を対象とする定員六十名の障害者支援施設として再スタートを切ることになったのです。利用者の多くは自閉症の診断を受けていることもあって、仙福課長は「『第二おしま学園』で培った経験や知識を最大限生かして行きたい」と話してくれました。まさに、今日の見学では、そうした姿を垣間見ることが出来ました。

『ねお・はろう』という名称には、その名のとおり「(地域に)根を張る」という意味や、「NEO(新しい)HALO(光の輪)」という意味もあり、利用者の方たちを中心とした支援の輪の中で「共に輝こう!」といった願いが込められているそうです。先ほどの圧縮機もそうした支援の輪の中で生まれたのでしょう。本人らしさを大事にする願いや情熱の元、自閉症支援における高い専門性が発揮されている姿がとても印象に残った取材となりました。

星が丘寮

星が丘寮

お昼休憩を挟んで、今度は『星が丘寮』に向かいます。本園舎は「ゆうあいの郷」入り口付近『旧明和荘』を左に折れた先の、海が見える丘に位置しています。建物は『ねお・はろう』と同じ白塗り、濃い緑色の屋根が印象的です。取材の前に読んできた過去の「ゆうあい」の記事によると、この『星が丘寮』という名称は、晴れた夜空に映える星のごとく、いつまでも輝いて欲しいという願いから名付けられたようです。

到着後、まずは川又課長から『星が丘寮』の説明を受けました。先ほどご紹介した自閉症児施設である『第二おしま学園』開設から十年の歳月を経た昭和六十三年、成人になった自閉症の方たちを支えるために開設されました。定員は三十名、その九割が『第二おしま学園』出身の方たちでした。平成九年には増え続ける利用ニーズを受けて定員を倍増し、現在と同じ定員六十名の施設となりました。利用者の方たちは全て自閉症があり、知的障がいを併せ持っています。『ねお・はろう』と同じように、「TEACCHプログラム」に基づく、構造化支援のアイデアが活かされた支援が二十四時間、三百六十五日提供されています。

その後、本園舎内の「暮らしの場」を見学させていただきました。そこかしこに、一人ひとりの「見え方」「感じ方」「考え方」に配慮された、一日のスケジュールや今後の予定が示されています。オーダーメイドのツールの数々は見た目にとても分かりやすく、「何をするのか」「どれだけするのか」「いつ終えるのか」「終えたら次に何をするのか」などの情報が整理されています。中には、オリジナリティ溢れるユニークなものもあって、デザインも楽しげです。こうした個別支援が展開されるためには、一人ひとりへのアセスメントが日々徹底して行われていることが容易に想像されます。川又課長は「適切なアセスメントに基づき、一人ひとりの持っている力を暮らしの中に活かすことを大事にしています」と話してくれました。

スケジュール

次に「日中活動の場」を見学しに、屋外の作業棟に向かいました。三か所の作業棟では「空き缶のリサイクル作業」「ウニ箱の組立て作業」「製函作業」が行われていました。どの作業においても、物理的に構造化された個別エリアが用意され、やはりここでも一人ひとりに応じたスケジュールやワークシステムを用いた支援が提供されていました。「やり遂げた達成感を感じることが出来るように、作業の内容やボリュームを工夫しています」と説明を受けました。

今日最後の見学先は「六寮」という本園舎から少し離れた場所(地域交流ホーム夢から、道路を挟んで向かい側辺り)にある小舎(暮らしの場)です。ここでは、現在五名の方が生活しています。ここでの支援が開始されたのは平成二十三年のことだそうです。利用期間は原則三年、暫定的な利用目的で活用されているそうです。利用目的とは、再構造化された環境の中でアセスメントを行い、利用者一人ひとり違う今後の暮らしの選択肢や可能性を考えることだそうです。建物は全室個室で、バリアフリー構造となっています。外観は少し古めかしさはありますが、中は開始前のリフォーム工事によって新築さながらの綺麗さです。もちろん、冷暖房は完備、キッチンも安全面が考慮されたIHコンロが設置されています。

星が丘寮六寮

建物全体を通じて、動きやすく、物の取り扱いがしやすい工夫や配慮がされている印象を受けました。どこで何を行う場所なのかが明確で、空間の使い分けが分かりやすく整理されています。また、必要な物はすぐに使うことが出来るような場所に置かれ、使用頻度の少ない物は見えない場所に収納されています。日課やスケジュールもより主体的にこなすことが出来るようなアイデアが施されています。手順書についても、視覚からの情報が分かりやすい自閉症の方たちに配慮されたものとなっています。廊下にはトランジションエリアの役割を果たすボードが設置されています。トランジションエリアとは、活動間の中継基地の役割を担う場所で、一人ひとりに合わせたスケジュールやコミュニケーションカードが掲示されていました。

この小舎の利用期間は原則三年と申し上げましたが、現在の利用者が入居してちょうど三年が経とうとしています。次の「暮らしの場」は、今秋開設予定の『グループホームすばる(旧明和荘をリフォームして活用)』を想定しているそうです。

自閉症の方たちを主対象にした施設を見学するのは初めてのことで、見るもの聞くこと全てが新鮮で勉強になる内容のものばかりでした。中でも「適切」な支援を展開するためには、「適切」なアセスメントが必要であることを痛感させられました。ありがとうございました。



ねお・はろう

事業種別:障害者支援施設

開設:平成25年

定員:60名/短期入所1名

星が丘寮

事業種別:障害者支援施設

開設:昭和63年

定員:60名/短期入所2名



 

世界自閉症啓発デーin HAKODATE 2015

4月2日、イベントが開催された。正確には、3月28日、”あおいろ”をテーマにした、はこだてマルシェ(蔦屋書店)に始まり、自閉症当事者アーティストの作品展(グリーンフォレストカフェ)が4月12日に最終日を迎えた。その間、金森赤レンガ倉庫では、啓発パネル展示に、ダウン症当事者のハープ演奏。ポールスターでは、展示やロゴグッズ販売。シネマアイリスでは、自閉症当事者が主人公の映画上映。画廊一花では、青をテーマにした個展。蔦屋書店では、「映画と自閉症」をテーマにした公開座談会に、ものづくり教室。芸術ホールでは、100点を超えるアート展に、出張ブリックラボ。五稜郭タワーでは、BLUEの音楽祭に、事業所製品販売、当事者製作動画上映。そして、夜には、タワーのブルーライトアップが行われた。本当はもっと個々の詳細を説明したいし、ご協力いただいた全員に感謝の意を伝えたいのだが、到底書ききれないので、断腸の思いで割愛させていただく。それほどまでに、たくさんの人の思いによって実現した日々だった。

五稜郭タワーのブルーライトアップ

五稜郭タワーのブルーライトアップ

さて、なぜこんなに盛りだくさんのイベントをやったかというと、4月2日は世界自閉症啓発デーだからである。国連でそう定められた日であって、年度替わりという日本の事情には若干の不都合があるが、とにかくその日は、自閉症の日で、自閉症について、この地域の多くの人たちに広めたいという思いを胸に活動を始めて、3回目のイベントであった。

啓発と言っても、やり方は様々である。毎日が啓発との声もある。誰のための啓発かという声もあるし、このイベントのような形の活動に対しても賛否両論がある。いろんな意見があるが、個人的には、全部正解だと思う。ほんの一欠片もデメリットやリスクの無い、それでいてコスト的にも効率的にも抜群の啓発方法なんて恐らく無いわけで、色々あって良いのだと思う。そんな中で、私たちが大切にしているのは、自閉症に対する理解や知識がゼロの人たちを1にする、1の人を増やすことである。つまり、当事者や保護者、福祉や教育の支援者などのいわゆる”関係者”ではない人たちに、広く浅く、正しく知ってもらうことである。そして、「知ってください!!」とグイグイ迫って行くものではなく、気楽に参加できるイベントに、普通に参加して楽しんでいただく中で、自閉症という情報にも触れていただく。繰り返しになるが、これが、完全無欠の方法だとは思っていない。それでも、参加してくれた方々の笑顔を見ると、「良かった」と感じることができた。

1回目から感じていたことだが、啓発の効果は、イベント当日の、イベントの参加者に対してだけではない。イベントの準備のプロセスにおいて、様々な地域の人、企業の人、機関の人等々とやりとりをする。当然、そのやりとりで、そもそもの啓発デーについて説明をするし、その流れで自閉症についても説明をする。多くの方が、興味を持って聞いてくれるし、ナチュラルに受け止めてくれる。イベント準備が進むと同時に、また一歩、啓発が進んだと思える出会いが多くある。

というわけで、啓発はもちろん、啓発デーに行う何かしらの活動は、今後も続けていく。予算のこともあるので、どのような形になるかは分からないが、理解の輪が着実につながり、広がっていることを実感しているし、今後も期待している。そういえば、4月2日の翌日の朝、近所のおじさんが、「旦那さん、テレビ出てたね」と出勤前の僕に声を掛けてくれた。イベントの様子とインタビューが放映された番組を偶然にも観てくれたらしい。少し恥ずかしかったが、嬉しかった。啓発が進んだ。

(あおいそらチーフコーディネーター 片山 智博)

五稜郭タワーアトリウムBLUEの音楽隊

五稜郭タワーアトリウムBLUEの音楽隊

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