おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2015年3月号


平成26年度 大場茂俊賞受賞論文

大場茂俊賞とは、内外部などに発表された論文、視察報告、研修報告、各事業所での取り組みなどの中から優れたものに対する表彰で、職員による論文が毎年発表されます。この度はそのなかから優秀賞に選ばれた職員に論文の要約をまとめてもらいました。

自閉スペクトラム症の少年たちへの視覚教材を用いた性教育
〜地域の連携から生まれた教材

発達障害者支援センターあおいそら 岩田 晶子

発達障害者支援センターへの相談において、性に関する相談は、年々増加しており、自閉スペクトラム症(以下ASD)の成人においては、特性にあわせた適切な性教育を受けられなかったことで、不適切な行動に発展し、結果的に大きな問題となって繋がることもあり、学齢期での適切な性教育の必要性は高いと考える。しかし、ASDの子どもたちに、丁寧に療育的な性教育を行える支援機関は地域には殆どなく、学校でも制限が有り、家族が、我が子に性を教えることも、非常に難しいのが現実である。

筆者は、性教育として伝えるべき内容と、その組み立てが具体的に示されれば、教師や家族や支援者が、適切な性教育をし易くなるのではないかと考えた。また、性や薬物に関する学校への出前授業を行う、地域の医師や看護師等が所属する団体とともに考えることで、学校でのASDの児童生徒への性教育も拡幅すると考えた。本実践は、当センターを利用する思春期の二人のASDの児童生徒と家族の協力を得て、地域の団体とともにASD の人に合わせた性教育の教材を作成し、性教育のモデル授業を行うことで、思春期に適切な性に関する知識を伝える機会や場所を確保し、更に、今後に続く子どもたちへの適用可能性を探ることを目的として実施した。

対象の子どもたちの実態評価から、一回の授業を40〜60分とし、子どもたちの興味と視覚に訴えることを考え、主教材はイラストのスライドとした。教材は、子どもたちが既に知っている知識と初めて聞く内容を混在させ、難しい印象の軽減を図りつつ、医学用語を優先的に用いて専門性を演出し、卑猥な印象を払拭した。

人間関係等の複雑な内容については、理解のし易さを優先し、個別性の高い内容は「難しいので相談しよう」と伝え「相談」の大切さ、相談する相手を選ぶことを強調した。プログラムは、「男の子のからだ」「女の子のからだ」「おつきあい」「性行為」の四回の授業とその後の数回の個別セッションで構成した。クイズのような参加型の要素を入れ、生理用品などの実物を提示し、子どもたちの集中力を維持する工夫も取り入れた。家族や担任には別室でカメラを通して授業の様子を見て頂いた。

写真1

子どもたちは、一回目から「大切な話だと思った」「また勉強したい」「初めて知った」等の感想項目にチェックし、結果的に、性の相談を自ら適切な相手に出来るようになった。これまで、大人に相談できずに、周囲が違和感を抱くような子どもたちの振る舞いの要因は、性に関する知識や具体的な振る舞い方、他者の視点等を知らないためだったと考えられた。抽象的でわかりにくい性や、社会的な振る舞いについて、視覚的な教材をつかった授業を通じ理解が促進したと考えられた。また、家族からは、子どもたちが自ら授業のテキストで復習していること、家族も伝えるべきことが明確になったとの報告があった。ともに教材を作った地域の団体ではこの後、教材を改編しながら、地域の学校の出前授業を行っている。授業は、非常に分かり易いとの評価である。この団体のおかげで、ASDの人たちが地域で適切な性教育を受ける機会や場所が出来つつあることは、大変望ましいことである。

写真2

子どもたちを中心において、活動することで、地域の団体とこの教材を作ることが出来、その過程で、ASDの特性を繰り返し話し、性教育の専門家にもASDの多様な特性を良く理解して頂くことが出来た。ASDの方への視覚的な教材の効果は非常に高いが、性教育の場面では、活用される場面がまだ少ないと感じられ、一人一人の理解に合わせた多様な教材の開発が望まれる。

ASDの子どもたちへの適切な性教育の充実を望み、教材の制作に携わった方々との繋がりが、一番の成果と感じています。性教育の基本的な資料として、是非多くの方に、アレンジしながら使って頂くことを願っています。

top

前のページにもどる