おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2015年2月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.8


      新生園 安田・古岡

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

今回の訪問先は、当別地区(北斗市)にある『ワークショップまるやま荘』と、『サポートかわつき』です。前者は、『旧明生園』の園舎改築に伴い、おしまコロニーとしては初めての入所型授産施設として開設されました。当別地区における作業体制の再構築や、地域生活への流れを作り出す中心的役割などを果たして来ました。後者は、当別地区から久根別地区の間に点在するグループホームで暮らす利用者の方たちを支え続けています。今回は、当別地区を中心とした「日中活動」、「地域生活」の現在(いま)を取材したいと思います。

ワークショップまるやま荘

ワークショップまるやま荘

夜半から冷たい雨が降り続く十二月中旬の朝、『ワークショップまるやま荘』に到着しました。「到着」と言いましても、今回の編集委員である私たちが所属する『新生園』から百メートルほどしか離れていませんので、時間にしてわずか二分。しかし、普段これほどの近さにありながら、取材を前にして『ワークショップまるやま荘』のことは「ほとんど知らない」ということに気付かされます。今日の取材を終える頃には『ワークショップまるやま荘』通(つう)になれるよう、たくさん勉強したいと思います。

パン工場

パン工場

到着早々、紀谷課長から「さっそく、パン工場に向かいます」と促され、すぐに車で移動しました。出退勤途上に必ず目にするこの「パン工場」ですが、中に入るのは初めてです。前号「訪問記Vol.7」でご紹介した『クッキーハウス』でもパンを作っていますが、「コロニーパン」と言えば、ここ「パン工場」のものを指すのが一般的です。元々「パン工場」は、『明生園』が母体となって、当別地区に暮らす利用者の方たちに「美味しいパンを食べさせてあげたい」といった動機で建てられたものでした。同時に、作業種目の一つとしての確立、及びその後の就労自立を見通したものでもありました。それから四十年以上の月日が流れ、「コロニーパン」は内部消費だけでなく、近郊の学校給食やイベント販売等でお馴染みの味となって、地域に根ざした信頼と評判を得るようになったのです。

パン

私たちも白衣に着替えて、作業体験をさせて頂くことになりました。内容は、生地の丸め作業です。一見、簡単そうに見えるのですが、ムム…「丸くならない」。次々と上手に仕上げる方を見ると、捏ね板に生地を打ち付けて空気を入れているように見えます。焼く前からフワッとしていて、既に美味しそうです。必死に真似をしてみますが、上手くいきません。私に何度も叩かれて、いびつな形になった可哀相な幾つもの生地ですが、焼く順番を待つ生地たちの片隅にこっそりと混ぜてもらいました。その後も「コロニーパン」の代名詞とも言える豆パンや、その他の菓子パンも丸めさせてもらいましたが、楽しさとは裏腹に、とっても難しい作業でした。利用者の方たちについては、その技術やチームワークもさることながら、職員主導では無い自主的な作業姿勢に感心させられました。

本(居住)棟

捏ねたパンの焼き上がり具合が気になって、後ろ髪を引かれる思いでしたが、『ワークショップまるやま荘』本棟に戻ります。紀谷課長から、改めて概要説明を受けました。『ワークショップまるやま荘』は、『旧明生園(定員百名)』の全面改築に伴って、平成四年に定員五十名の入所授産施設として開設されました(『明生園』は、五十名定員の入所更生施設となる)。余談ですが、この「まるやま」という名称、本棟から西南西の位置に一望できる「当別丸山(標高482.8M/トラピスト修道院の裏手)」から名付けられたそうです。開設を契機に、当別地区における作業体制の見直しと再構築が進められることとなりました。作業種目や支援体制は、時々に変遷(過去「食肉加工」「合鴨飼育」他)しながら、現在は「製パン」「クリーニング」「農産加工」「喫茶」「売店」「余暇活動班(ゆうゆう)」等となっています。本棟で暮らす入所利用者のみならず、就労継続支援B型(定員十名)事業を起ち上げることで、地域生活者の就労ニーズにも応えていらっしゃるそうです。

その後、本棟の居室を案内して頂きました。建物は二棟に別れ、二人部屋を基本とした四室ごとのユニット制となっています。各ユニットには、台所や洗面所、トイレ等の設備が備わっています。建物が出来て二十年以上が経過するため設計上の古さは否めませんが、どこか共同アパートのような佇まいからは「次の暮らしのステージを目指す」といったような、開設当初のメッセージが明確に伝わってくるようです。現在も、生活全般を通じての「自立(律)的生活態度」を養う一方で、一人ひとりの自己選択を尊重し、自己実現に向けての支援を大切にされているそうです。同時に、生活の質そのものの向上にも取り組まれています。他にも紀谷課長に幾つか質問させて頂きました。一つひとつの回答から、利用者の方たちへの支援内容や生活の方向性には、一人ひとりの希望や意思と併せて、支援者によるアセスメントの根拠がしっかりと裏付けられていることを窺い知ることが出来ました。

農産加工棟(味噌製造)

とその時、紀谷課長の携帯電話が鳴りました。「大豆が炊きあがったみたいだから急ぐよ!」と、慌ただしく農産加工棟に移動します。扉を開けると、蒸かしたての大豆の何とも言えぬ良い香りが鼻腔をくすぐります。ここでは、三年前より材料と産地にこだわった無添加の味噌が造られています。その名も「まるやま味噌“豆っ娘”」。今冬からスーパー魚長各店で販売を開始したため、すでに購入されている方もいらっしゃるかもしれません。ちなみに、名付け親は園長だそうです。材料となる大豆や米麹は全て地元北斗市の農家から購入、塩は当別漁港から仕入れているそうです。当然、全て手づくり。発酵促進剤なども使わないので、じっくり一年間寝かせます。つまり、今口にすることが出来る味噌は、一年前に仕込んだものなのです。味噌作りの時期は「寒仕込み」といって、雑菌が繁殖しにくい寒い時期(一年のうちの半分程度)に仕込むそうです。私たちも、作業の仲間に入れてもらいました。まず、蒸かしたての大量の大豆を、大きな天板に広げて冷まします。紀谷課長からこっそり一粒頂いてパクリ。「美味しい!」甘くてホクホク、味噌にするのが勿体なく思えるような味です。その後、電動ミンサーなる機械のトレイに大豆を入れてミンチ状にしていきます。ミンチ状になった大豆は、大きな生け簀のような入れ物に用意された大量の米麹と塩の中に投入されます。利用者の方たちと一緒に撹拌(混ぜ合わせ)作業をしましたが、中々の重労働です。パン作りの汚名返上とばかりに、気合いも力も入れました。味噌作りを始めてまだ三年、今後も試行錯誤しながら軌道に乗せていきたい、とのことでした。

大豆

地域交流ホーム『夢』

お昼の時間になりましたので、『夢』に移動します。場所は『おしま学園』の隣にあります。二階の大きな研修室は、各種学習会や委員会活動で使用されています。新任職員の辞令交付式なども、ここを会場にして行われています。一階には、喫茶スペースや売店、図書室などがあります。他にも宿泊設備などもあって、多目的に利用されています。喫茶と売店は、『ワークショップまるやま荘』の日中活動種目の一つとして、利用者の方たちに就労の機会が提供されています。喫茶スペースで昼食(もろきゅうで味噌の試食もしましたが、自然な甘さで美味しかったです)を頂いた後、喫茶で働く二人の女性にインタビューさせてもらいました。

―お仕事は楽しいですか?

「はい、楽しい。忙しい日の方が楽しい」「売店で転んで骨折、救急車で運ばれたことがあります。すごく痛かった。今は治ってまた働いているんです」

―どのようなお客さんが来るのですか?

「まるやま荘、侑愛荘、他にも。○○さんの注文はいつも同じで、お蕎麦かうどん。たまにカツカレー」「出前にも行きます」

―仕事で大変なことはありますか?

「冬の雪かき。朝やるから」「冬の出前。すべるから怖いです」

―お住まいはどちらですか?

「グループホームです。明和荘です」「私も一緒です」

―グループホームでの生活はいかがですか?

「部屋はみんな一つずつあります。仕事が終わったら、お風呂入ったり、音楽聞いたり」「朝は五時半に起きています。当番をしてから、自分で仕事に行きます。買い物も自分でします」

短い時間でしたが、「仕事が出来る喜び(特に怪我したお話をされた方)」「多くの方たちとの豊かなつながり」「支援者による支えの元、主体的な生活の組み立て」等が感じられる貴重な機会となりました。

サポートかわつき

サポートかわつき

次に『サポートかわつき』に向かいます。場所は「ゆうあいの郷」入口付近、『星が丘寮』へ向かう途中にあるグループホーム『明和荘』の中に事務所があります。おしまコロニーは現在、四十五か所のグループホームを設置運営しています。それらのグループホームをバックアップする拠点は、現在三か所あります。一つは「訪問記Vol.5」でご紹介した『サポートはまなす』、函館市桔梗方面から北斗市七重浜方面に至るエリアのグループホームを支えています。二つ目は、『サポートカーム』、北斗市久根別方面を中心にしたエリアにあるグループホームを支えています。三つ目が、今回ご紹介する『サポートかわつき』です。事務所のある『明和荘』を含めて北斗市当別方面から同市久根別方面にかけて点在する八か所のグループホーム、三十一名の方の生活を支えています。サービス管理責任者の川村さんから現状について伺いました。八か所のグループホームのうち、法人所有のものが五か所、賃貸二か所、公営住宅(いしべつ荘)一か所となっています。ちなみに、公営住宅をグループホームとして使用する取組みは、開設当時(平成四年)には全国的に見ても殆ど例が無かったそうです。当時の上磯町との連携はもちろんのこと、当別地区の地域住民の方たちからの、おしまコロニーへの信用と信頼が裏打ちされた事例と言えるのかもしれません。

みついし荘

その後、当別地区のグループホーム『みついし荘』の見学に連れて行って頂きました。場所は、国道二百二十八号線沿い、渡島当別駅より三百メートルほど松前寄りに行ったところにあります。ウッド調の素敵な外観の建物の中に入ると、リビングから見える景色は見事なオーシャンビュー。当別漁港から津軽海峡が眼前に広がります。ただ残念ながら当日は寒風吹きすさぶ悪天候で、オーシャンビューという語呂とは似付かない、津軽海峡冬景色となっているのでした。「初夏の頃は素敵だろうな」なんて考えていると、川村さんと世話人さんのやりとりが聞こえてきます。どうやら二階で静養している方がいっらしゃるようで、夕食の献立の相談をされています。施設とはまた違った温もりを感じます。リビングの壁には、数か月前に引っ越して来た方の投薬ボードが貼ってあります。自分で管理できるよう工夫が凝らされたものです。紀谷課長が話していた「自立(律)的生活態度」の大切さの話が蘇ります。グループホームの雰囲気を体感できたことで、私たちが普段支援する入所利用者の方たちにも、また違った視点でアプローチが出来そうで、本当に貴重な経験をさせて頂きました。

一日の取材を通して、たくさんのことを学ぶことが出来ました。日常業務の中に取りこぼしがちな視点や、支援のポイントなど、とても大事なことに気付かされた気がします。毎日の支援に生かすことが出来るよう頑張ります。ありがとうございました。



ワークショップまるやま荘

事業種別:障害者支援施設

開設:平成4年

定員:施設入所支援40名

     生活介護  40名

     就労B型  10名

サポートかわつき

主たる事業所:明和荘

従たる事業所:GH7ヶ所

定員:31名

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