おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2015年1月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.7


      侑愛荘 矢幅・羽馬

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

今回は、久根別地区(北斗市)にある『クッキーハウス』と『ワークセンターほくと』を訪ねます。前者は、おしまコロニー二番目の通所授産施設として開設されました。クッキーやパンの製造、及び店舗販売を通して、各種日中活動の支援や、就労に向けての取り組みを展開しています。一方、後者は当初『クッキーハウス』の分場としてスタートしました。現在は、独立した生活介護支援事業所として、きめの細かい個別支援サービスを提供しています。積極的な事業展開を見せる久根別地区において、その中心的役割を担う両事業所を取材します。

ワークセンターほくと

ワークセンターほくと

本日、最初の訪問先は『ワークセンターほくと』です。住所は北斗市押上、JR上磯駅から徒歩で十分程度の場所にあります。隣には北斗市運動公園のグラウンドが見えます。付近には住宅も多くありますが、緑豊かでのどかな環境に囲まれています。

到着後、菅野課長補佐に建物の中を見学案内して頂きました。正面玄関向かって右にある吹き抜けから、朝の明るい日差しが差し込んでいます。この吹き抜けから右の二階建て部分は、平成二十一年度に定員増(二十→四十名)した際に増築した建物だそうです。その際のお話を伺いました。新たに加わった方たちの多くは、当別地区の『旧新生園通所部』に通っていた利用者の方たちでした。中には、高度な支援や配慮を必要とした方もいたため、移行の際には、NPO法人『それいゆ(発達障害特化型支援機関)』の服巻智子氏や、『あおいそら(北海道発達障害者支援センター)』のコンサルテーションを受けることになったそうです。この移行支援における実践を通して、構造化支援を活用したアイディアは、自閉症の方のみならず、あらゆる方たちの支援に有効であることを再確認することとなりました。以来、一人ひとりに焦点を当てた質の高いサービスを提供しようとする姿勢と専門性が求められていることを、より自覚することになったそうです。

そうこうしていると、続々と利用者の方たちが出勤してきました。現在の在籍者数は四十二名。在宅、及びグループホームで暮らす方たちが、事業所のバスやご家族の送迎で通って来ています。普段『侑愛荘』で「暮らし」を支える仕事をしている私(羽馬)にとって、出勤の風景を眺めるだけでも新鮮な感じがします。職員の方たちは機敏な動作で次々と利用者の方たちを受け入れ、笑顔で挨拶をした後に活動の支度を調えていきます。

ワークセンターほくと吹き抜け

『ワークセンターほくと』には、一人ひとりの特性やニーズに合わせて的確な支援を行うことが出来るよう、四つの活動グループがあります。活動内容は様々です。一般企業からの下請け(各種箱折り、シール貼り他)やリサイクル(空き缶つぶし)等の作業活動、コースターやランチョンマット等の創作活動、またレクリエーションや各種球技等の運動、などです。他にも様々な社会体験活動メニューも用意され、支援度の高い方や、高齢化により直接介護が必要な方、情緒面での配慮が必要な方、いずれのニーズにも対応可能な活動メニューが用意されています。とにかく、一人ひとりに応じて「ここまで丁寧に!」と驚くほど、きめの細かい支援が心がけられています。

私たちは午前中、「グループ2」の利用者の方たちと一緒に和紙制作に参加させてもらうことになりました。ここは「手づくり和紙工房」と名付けられ、牛乳パックの再利用による和紙製品を作っています。活動に取り組む利用者の方たちの表情はどこか誇らしげで、自信に満ちたものでした。先ほど「丁寧に!」と書きましたが、「至れり尽くせり」の支援というわけでは決してありません。一人ひとりによって異なるオーダーメイドのスケジュールや手順書が用意され、それらを手がかりにして「主体的」に活動参加している姿がありました。こうした個別支援を可能とするためには、一人ひとりに対する適切で綿密なアセスメントが為されているであろうことが窺えます。環境面でも、用具や材料、人の動き、活動場所が目に見えて分かりやすいように、とても工夫されています。

あっという間の活動体験でしたが、そこかしこに構造化支援を活用したアイディアが施され、利用者の方たちが生き生きと笑顔で活動に取り組んでいる姿がとても印象に残りました。心を込めて作ったこれらの作品の数々は、当別地区の『夢』や『クッキーハウス』で販売されています。お寄りの際は、手にお取りになってくだされば幸いです。

ワークセンターほくとグループ2

一人ひとりがその人らしく、伸び伸びと活動する姿に大きな感銘を受けると同時に、そうした支援を可能にする職員の皆さんたちの真摯な姿勢や高い専門性に大きな刺激をもらって、私自身の仕事の姿勢を振り返る良い機会となりました。

クッキーハウス

クッキーハウス

『ワークセンターほくと』で利用者の方たちと一緒に昼食を頂いた後、次の訪問先に向かいます。

北斗市総合文化センター『かなで〜る』を右手に見ながら車で七分、大野川に架かる上磯大橋を下りた左手に、目指す『クッキーハウス』がありました。一口に『クッキーハウス』と言いましても、敷地内には、合わせて四つの建物があります。右奥にあるのが、建物に「クッキーハウス」と大きく書かれた『第一工場』、その隣が『第二工場』、手前隣には食堂があります。道路に面しているのが、緑色のひさしが映えるパンの店『ハーベスト』です。

守口課長にそれらの建物を案内して頂いた後、『ハーベスト』二階にある交流ホームにて『クッキーハウス』の成り立ちや概要について伺いました。前々回(11月号)、『おしま屋』の前身『だいさん』についてご紹介しました。正式名称は、おしまコロニー小規模作業所『おしま第三共働作業所』、通称『だいさん』です。昭和六十一年、この『だいさん』を含めて、おしまコロニーは相次いで三ヶ所の小規模作業所(第一〜旧上磯町七重浜、第二〜函館市湯の川)を開設しました。これによって、福祉的就労の場が地域の中に広がることとなり、入所施設利用者の地域移行の門戸を広げると同時に、在宅者の生活をより身近で支えていくことを可能にしていきました。平成三年に、国は「働く場」の拡充を目的とした授産施設の分場方式を制度化したため、これらの小規模作業所のうち二ヶ所を石川地区の『ワークショップはこだて』の分場(本店と支店のような関係)として位置付けました。その後、「働く」場としてのニーズや役割が益々確かなものとなった平成六年、二つの分場を統合して『クッキーハウス』が誕生したのです。現在の『クッキーハウス』は定員五十名(現員五十三名)。支援の狙いや利用ニーズによって「就労移行支援」、「就労継続支援B型」、「生活介護」といった三つの福祉サービスを用意しています。

その後、オレンジ色の制服に着替え、『第二工場』で利用者の方たちと一緒にクッキー作りを体験させてもらうことになりました。『第一工場』は、元請けの製菓会社からの注文を受けて機械化されたラインでクッキー等の商品を大量生産しています。一方、『第二工場』では手づくりのオリジナルクッキーやシフォンケーキを作っています。工場内に入ると、甘い香りが漂ってきます。皆さんに自己紹介をした後、さっそく仕事に取りかかります。内容は、クッキー生地を同じグラム数の重さに丸める、というものです。甘い香りとは対照的に、利用者の方たちの表情は真剣そのもので、「働く」ことの厳しさが感じられるピリッとした空気に包まれているのが分かります。作業自体は比較的軽易なものですが、集中力と根気が必要です。また、立ち仕事であるため、一日こなす体力も求められそうです。三十分ばかりの時間でしたが、心地良い疲労感が残りました。

クッキーハウス第二工場

次に『ハーベスト』に移動して、店舗のバックヤードでパン作りを体験しました。ここでは、毎日九十種類以上のパンを焼いているそうです。ガラス越しに、お客さんの姿も見えます。夕方近くで、あらかたの製造は終わり、店舗に陳列されたパンの多くは捌けているように見えます。小腹が空き始める時間ということもあって「取材が終わっても、あの美味しそうなパン、まだ残っているかしら…」なんて期待が頭をかすめましたが、そのような買い物の時間は取れませんでした(…残念)。

ハーベスト

本日最後の見学先、昨年出来たばかりの建物『クッキーハウスⅡ(従たる事業所)』に案内して頂きました。場所は『クッキーハウス』から車で五分、同じ北斗市久根別でも商店街の中にある本屋さんに隣接しています。福祉サービスの種類は「就労継続支援B型」、定員は十名です。ここでは、個別の働き方をより重視した支援が行われています。支援の手法は、構造化支援を活用したアイディアがベースとなっています。

クッキーハウスⅡ

最後に、守口課長から『クッキーハウス』の現状や今後の課題について伺いました。施設の作業は、従来内職的な内容に終始して、外部評価とはどこか無縁の性格を持つ側面がありました。しかし、『クッキーハウス』は、「施設」という守られた枠を越えて、一般市場に通用するような「労働」のあり方や「商品」を追求することによって、喜びややりがいを得ることを目指して来ました。もちろん、その「労働」に対する賃金の向上にも力を入れてきました。しかし、開設から二十年が過ぎ、利用する方の状態像やニーズは多様化してきています。「利用する方たち一人ひとりの『働き方』を丁寧に支援して、その人らしさを発揮することが求められていることを実感します。そうした努力をする(個別支援メニューの充実、従たる事業所の開設、など)一方で、開設当初からのモットーである『働く』ことへのこだわりも、やっぱり大切にし続けていきたいと思っています」と守口課長は話してくれました。

私たちが勤める『侑愛荘』の利用者の方たちは、目を輝かせて若い頃の仕事自慢をしてくれることがあります。「働く」ことの誇りや喜びが、その人の人生をいかに豊かに彩ることか。今日は日中活動が意味することについて、深く考えさせられた一日となりました。



ワークセンターほくと

事業種別:生活介護事業所

開設:平成19年

定員:40名

クッキーハウス

事業種別:多機能型事業所

開設:平成6年

定員:50名(うち従たる事業所10名)

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