おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2014年12月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.6


      明生園 増田・新岡

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

今回は、当別地区(北斗市)にある『ゆうあい会診療所』と、石川地区(函館市)にある『おしま地域療育センター(ゆうあい会石川診療所併設)』を訪問します。『ゆうあい会診療所』は、『おしま学園』の開設から四年後に開設、以来「ゆうあいの郷」を利用する方たちの健康を支え続けています。一方、『おしま地域療育センター』は診療所としての医療機能を兼ね備えた、地域における総合(診療・評価・相談・療育等)機関としての役割を果たしています。一人ひとりの人生を支える上で、欠かすことの出来ない「医療」、「地域療育」の分野を担う両事業所を取材します。

ゆうあい会診療所

ゆうあい会診療所

同じ当別地区の『明生園』で勤務する私たちにとって『ゆうあい会診療所』は普段から頻繁に出入りする親しみのある場所です。建物は「ゆうあいの郷」入り口付近の右手、道路を挟んで『侑愛荘』の向かい側にあります。

到着後、丸山看護師に建物の中を案内して頂きました。現在の診療科目は「精神科」「小児科」「内科」「皮膚科」「眼科」「歯科」となっています。現在の建物は平成二十三年に出来たばかりで、どの部屋も新しく設備も整っています。カルテ収納庫という場所には、膨大な量のカルテが保管されています。「ゆうあいの郷」を利用する方たち一人ひとりの健康管理に関する情報が大切に綴られています。長く在籍している方のファイルは、何十年分も貯まって分厚くなっています。丸山看護師はファイルを手に取って、昨日の出来事を話すかのように、以前のエピソードや思い出話を教えてくれました。「このカルテの山は、宝の山です」

その後、研修室に移動してお話を伺いました。『ゆうあい会診療所』は昭和四十六年に開設しました(場所は、道路を挟んで現在の『パン工場』の向かい側)。私(増田)が入職した時は、まだ現在の建物に移転改築する前でしたので、旧『ゆうあい会診療所』の建物の記憶は色濃く残っています。二階建ての建物でした。丸山看護師によると「現在でも、民間の障がい者施設で医療機関を独自に設置している所は国内でも数えるほど」とのことですので、当時にすると更に希少な事業であったであろうことが想像できます。「ゆうあい」第15(昭和46年8月)号には、開設動機が次のように記されています(後日調べ)。「施設の指導員は、生活、作業、学習を通して、また医学的な立場からは継続的な診断と治療が、まったく平行に行われてこそ、理想的な処遇と言えるのではないでしょうか(故大場茂俊前理事長)」当時の「ゆうあいの郷」で生活する230余名の健康について、決然たる態度で責任を持とうとする姿勢を窺い知ることが出来ると同時に、一方では、近隣の医療機関と距離が遠いという立地条件上のやむにやまれぬ理由もあったようです。

丸山看護師は「知的障がいがある方たちの多くは、自らの症状を正しく自覚して、それを他者に伝えることを苦手にしています。利用者の方たちの健康を守るためには、職員の皆さんの普段からの観察力が欠かせません。しかし、その観察力だけでは客観性に欠けるので、より正確なデータを採集できる各種『検診』の重要性を感じています」と話してくれました。歳月は流れ、「ゆうあいの郷」では高齢化の波が押し寄せています。以前からの内科検診や歯科検診に加えて、生活習慣病検診、各種がん検診など、以前に比べて種類が増えています。検診機会の増加は、利用者の方たちの負担が大きいのも事実ですが、それも関係者の努力や理解で負担軽減策が講じられるようになりました。「検診による客観的データの蓄積が一人ひとりの健康を支えています」

最後に「障がい者理解が進まない医療現場の現状」についての話がありました。私が所属する『明生園』においても様々な疾病を抱える高齢利用者の割合が増えてきています。検診後の精密検査で指定された総合病院を受診しても、重度の知的障がいや自閉症特性を理由に検査や入院を拒否された経験があります。丸山看護師は「ノーマライゼーションの考え方が広がりつつある中でも、知的障がいがある方たちが一般の医療機関を受診するのに障壁(バリア)が未だに根強くあるように感じます。それは、主に医療サイドの理解不足に起因するケースが殆どです。『ゆうあい会診療所』は、知的障がいがある方たちの健康管理に関する多くのデータが蓄積されています。そうしたデータや様々な知的障がい者医療に関する情報をどのように発信するか。また、医療と福祉の連携をどのような方策で進めていくことが出来るのか。それらは課題の一つと自覚しています」と話してくれました。

おしま地域療育センター

おしま地域療育センター

お昼休憩を挟んで、次の訪問先『おしま地域療育センター』に向かいます。場所は石川地区、10月号で取材した『ワークショップはこだて』の正面に建物があります。私(新岡)が所属する『明生園』などの事業所に、数年前から理学療法士を派遣して下さるようになってから当別地区と接点が出来たようですが、恥ずかしながら、私はそれ以上の情報や知識は殆どありません。今日はたくさん勉強するつもりで取材に伺いました。

見学説明は、戸巻副所長にして頂きました。そもそも勉強不足でしたが、『おしま地域療育センター』と『ゆうあい会石川診療所』は別棟では無く、『おしま地域療育センター(広義)』という事業所の中に、医療サービスを担う『ゆうあい会石川診療所』と、福祉サービスを担う『おしま地域療育センター(狭義)〜通称「おひさま」』と、二つの部門があることを知りました。建物は二階建てですが、おおよそ一階部分は『ゆうあい会石川診療所』、二階部分の約40%は『おひさま(児童発達支援事業)』で使用しています。それらの部門で果たす機能は独立したものではなく、共働、補完し合う関係性のようです。午前に訪問した『ゆうあい会診療所』は、主に「ゆうあいの郷」で生活する施設利用者(その他希望者の受診可能)の健康管理や積極的な治療を主業務としていることに対して、『おしま地域療育センター』は地域外来をメインにして、乳幼児期から成人期に至るまでの発達に関わる「診療」「評価」「相談(訪問も)」「療育」「リハビリテーション」等を行う総合機関としての役割を果たしていることが分かりました。

次に『おしま地域療育センター』が開設された経緯を伺いました。おしまコロニーが「地域」をフィールドに取り組んだ実践には、過去二つの大きな流れがありました。一つは、前回取り上げた『はまなす寮』を中心とした「地域移行」「社会参加」の流れであり、もう一方は『おしま学園』等での実践に端を発し『おしま地域療育センター』の開設へとつながった「地域療育」、「早期療育」への流れです。その萌芽は、昭和二十八年に誕生した『七重浜保育園』における障がい児保育の時代から既に見られていましたが、その流れが確かなものとなったのは、昭和四十年代後半から始まった『おしま学園』での幼児療育でした。昭和五十年には、その実践を土台に『母子訓練センター』を開設して「母子訓練」が始まり、その後の同園の「短期入所」、『つくしんぼ学級』の開設へと続いていきました。これに保育園や幼稚園などが加わって、おしまコロニーの「早期療育」体系が形作られていきました。これらの事業の幾つかは、その当時全国でも数少ない先駆的な取組みであったようです。更に「母子訓練」後の任意のアフターケアは、制度化された「巡回療育相談」に形を変え、施設の枠を越えた在宅生活を基盤とする「地域療育」が展開されるようになりました。これらの活動が地域の関係機関との連携を深め、幼児よりもっと早い乳幼児に対応可能な医療機能を併せ持つ『おしま地域療育センター』の開設(昭和六十年)へとつながっていくことになるのです。 

次に、現在の部門別の事業内容について伺いました。

ゆうあい会石川診療所(医療部門)

乳幼児期のみならず、成人期に至るまでの発達に関わる医学的診断や評価、相談、各種リハビリテーションを行っています。スタッフは、医師三名(常勤一名、非常勤二名)と看護師一名、理学療法士(PT)三名、作業療法士(OT)二名、言語聴覚士(ST)三名、臨床心理士(CP)非常勤四名で構成されています。診療科目は「小児科」「精神科」「リハビリテーション科」「整形外科」で、これらは全て予約診療となっています。中でも「発達障がい」に関する相談が増加の一途を辿り、場合によっては新規受付は一年先ということも珍しくないそうです。「発達障がい」が社会的に広く知られるようになったことで、年齢を問わず診察を希望する人や、大人になり社会に出て初めて診断を受ける人が増えている、とは聞いていましたが、これほどまでのニーズがあるとは知らず、大変驚きました。この予約待ち時間の長さは『ゆうあい会石川診療所』の喫緊の課題となっているそうです。戸巻副所長に「やはり、発達障がいの方は増えているのでしょうか?」と聞いたところ、「一概にそうとは言えません。微増程度という印象です」と話してくれました。

おひさま(児童発達支援事業)

「ことばが遅い」、「コミュニケーションが苦手」、「落ち着きがない」、「集団活動に参加しづらい」など、概ね1歳から6歳までの乳幼児期のお子さんを対象に発達支援、及びご家族への養育支援を行っています。未診断のお子さんも対象にしています。現在の定員は35名、5人1組で7クラス(親子療育3クラス、単独療育4クラス)あるそうです。本日はそのうちの「いちご」クラス(単独/幼保園児)の療育場面を見学させて頂きました。活動内容は、現在子どもたちの間で大人気の妖怪ウォッチのメダル作りです。5名の子どもたちが席に着くのを待って、2名の支援員が見た目に分かりやすい手順書に沿ってお手本を示していきます。座っていられない子ども、後ろに控える私たちのことが気になってキョロキョロする子ども、お手本が終わるのを待てない子ども、様々です。支援員は適宜一人ひとりのペースに合わせて肯定的な声かけでやる気を引き出そうとします。メダルが出来上がるとどの子も笑顔で満足げな表情となり、部屋を移動しておやつの時間となりました。こうした子どもたちの多くはコミュニケーションを不得意としています。先ほどの活動場面では「分からない」「困った」時に「ヘルプ」カードを使用していましたが、おやつの場面では「下さい」カードを使います。これらは「要求」という意思表示の練習となります。他の活動場面でも、コミュニケーションにおける「発信」や「受信」の練習を自然な形で繰り返していました。

最後に、戸巻副所長より「子どもたち本人に対する早期療育はもちろん大切ですが、同時に、子どもを支えるお母さんの気持ちにどう寄り添い、どのように支えていくかが大事です」と教えて頂きました。



障がいがある方たちの生涯に、確固たる決意で責任を持つために欠かすことの出来なかった「医療」と「地域療育」というピース。それらが形作られた経緯に思いを馳せながら、また一つおしまコロニーの理解を深めることの出来た一日となりました。



ゆうあい会診療所

事業種別:診療所

開設:昭和46年

診療科目:精神科・小児科・内科・皮膚科・眼科・歯科

おしま地域療育センター

事業種別:障害児通所支援事業所及び診療所

開設:昭和60年

実施事業:指定児童発達支援事業(おひさま)

       ゆうあい会石川診療所(小児科・精神科・整形外科・リハビリテーション科)

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