おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2014年10月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.4


ねお・はろう 榎本・中島

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

今回は、石川地区(函館市)にある三つの事業所を訪問します。「暮らし」を支える『函館青年寮』、そして「日中活動」を支える『ワークショップはこだて』と『函館青年寮通所部』です。『函館青年寮』は前号で取材した『新生園』と『明生園』の次に開設された入所型施設で、コロニーでは初めてとなる函館市内に建設されました。街の中にある立地条件を生かして、当時はまだ珍しかった通所部門も併設し「働く」ことに重点を置いた取り組みが進められてきました。それから約四十年、移り変わる時代と共に、幾多の変遷を重ねてきた石川地区の現在(いま)を取材します。

函館青年寮

函館青年寮

石川地区は、函館市の中でも有数の住宅地となった石川町にあります。昨年出来たばかりの「蔦谷(つたや)書店」とも目と鼻の先で、住宅街のど真ん中に位置しています。一方、私たちが所属する『ねお・はろう』のある当別地区(北斗市)は、雄大な大自然の中にあります。同じコロニーの入所施設とはいえ、周辺環境のあまりの違いに改めて驚きを覚えます。『函館青年寮』の外観は、そうした周囲の景観と調和する、落ち着いた色調の、暖かみのあるデザインとなっています。入所施設然とした威容を感じさせない佇まいが印象的な建物です。

到着後、山本課長から石川地区の成り立ち、概要などについて説明を受けました。『函館青年寮』が開設した昭和50年当時は、辺り一面畑地で牧歌的な風景だったようですが、函館新道が完成した平成13年頃から急速に市街地化したそうです。

施設が街の中にあることの利点について伺いました。「買い物に行くにも、ちょっとした外出の際にも、とても便利な場所です。周囲も一面アスファルトに囲まれているわけではなく緑も多いので、散策や散歩をするにも気持ちが良いところです。そして、何かあった際には、近くの病院にすぐかかることの出来る安心感は大きいですね。現在、利用する方たちの平均年齢は53歳を超え、介護や医療のニーズが高い方が増えています。『青年』寮と言うけど、実態は『中高年』寮に近い。病院などの医療機関が近くにあるのは、やっぱり心強いです。」一方、難しい点については「当然、地域住民の方たちとのつながりを大切にしなければなりません。女性寮のある2階などは、窓を開けると隣家までほんの数メートルの距離しかありません。利用者の方たちに関することで過去に苦情を頂いたことは数えるほどしかありませんが、夜間の生活音(洗濯機、乾燥機等)やゴミの管理、垣根を越えてはみ出した大きな植栽などが理由で苦情を頂くことがあります。そうした意味では、地域コミュニティにおける私たち職員自身のモラルやマナー、常識感覚を磨く必要性を感じております」とお話し頂きました。

その後、建物の中を見学案内して頂きました。共用棟を中心に右側が「なずな(女性)寮」、左側が「すぎな(男性)寮」という居住スペースで構成されています。各々20名(二つのユニット編成)、居室は全てプライバシーが最優先された個室となっています。幾つかの居室を見せていただきました。中には自閉症の方向けに物理的工夫が施された空間もあって、「なるほど」と思わされるアイデアもありました。ホール(居間)も広々しており、30畳近くありそうです。吹き抜けになっているので開放感も抜群です。利用者の方たちの殆どは、この後に訪れる予定の『ワークショップはこだて』にいらっしゃるためお会い出来ませんでしたが、思い思いにくつろいで過ごす風景が目に浮かぶようでした。山本課長は「施設ではあっても、“普通の暮らし”を強く意識した建物構造、日課を心がけています」と話してくれました。

『函館青年寮』は、平成13年に現在の建物へと装いを新たにしました。定員も、80名から現在の40名(残りの半数は『侑ハウス』へ)となりました。その際、『函館青年寮』は障がいが重い人たちを対象に、立地条件を生かしたきめの細かい医療、介護ニーズに応える役割を担うことが期待されたそうです。現在の『函館青年寮』からは、かつての「生活指導」や「訓練」を中心とした通過型(中間)施設、大きな集団の施設としての趣は窺えませんでした。そこには、個別の生活スタイルや多様化するニーズに真摯に応えるべく「暮らしの場」そのものの質を高めようとする姿がありました。

「施設福祉」から「在宅福祉」、「地域福祉」へと、時々の時代に必要とされる福祉ニーズに応じて姿形を変え続ける『函館青年寮』を通して、入所施設が辿る変遷の姿の一端を垣間見た気がしたのでした。

ワークショップはこだて

ワークショップはこだて

次は『ワークショップはこだて』に移動します。石川地区の同じ敷地内には、今回ご紹介する三つの事業所の他にも、医療・療育機関、相談支援機関などがあります。私たちが移動する途中も、ひっきりなしに人や車が行き来していました。『ワークショップはこだて』では、小谷副園長に案内して頂きました。現在の定員は50名、在宅の方やグループホームの方が通ってきているそうです。『函館青年寮』の方40名近くを併せると90名以上の方が利用していることになります。作業グループは5つあります。ご本人たちの希望や、支援の狙いに応じて構成されているそうです。作業内容は全て請負作業で、「加工食品の袋詰め作業」、「ウニ箱の製造」、「各種箱折り・シール貼り」などが主な作業種目です。

最初に3グループ(珍味等の計量、袋詰め作業)を見学しました。場所は建物の一番奥にあり、作業室の入り口には「グループの人間以外入室禁止」とあります。中を覗くと、20名以上の方たちが頭から靴の先まで真っ白の装いで作業に取り組んでいる様子が見えます。私たちも白衣やマスクをお借りしました。コロコロ(粘着)テープや吸引器でゴミの付着を取り除いた後は、入念に手洗いと消毒を行います。入室すると、そこは工場さながらの風景で、皆さん真剣な表情で黙々と仕事を進めています。担当者のお話によると、忙しい時は一日6,000枚以上こなすこともあるそうです。ここで働く方たちは、身辺面もおおよそ自立しており、コミュニケーションも達者な方たちが多いそうです。これから一般就労を目指していく方や、逆に、長く一般就労をして福祉就労に戻る方たちの受け皿にもなっているそうです。巧緻性や根気が必要な作業と思われ、短い時間ではあっても、私たちも同じ社会人として学ぶべき姿がそこにありました。

次に、2グループ(箱折り・シール貼り等)に移動しました。60坪近くありそうな広いスペースの中に、白地のついたて等を利用して物理的構造化がされた環境がありました。作業(自立課題メニューもあり)に集中しやすい環境が個別に用意されているのが分かります。このグループには、こうした特別な配慮や個別支援を必要とする方たちが多いようです。特に自閉症の方たちの姿が目立ちます。「利用する方たちの状態像やニーズの多様化により、従来の作業活動を中心とするスタイルだけでは対応が困難なケースが増えています。集団活動としての「働く」ことを通じた様々な学びや、自己実現を目指す姿勢は尊く、その価値は今も昔も変わらない。しかし、一方で、高齢化による介助や看護ニーズの高まり、行動障害やメンタルの問題を抱える人などの個別ニーズも無視することは出来なくなるほど増えています。“集団”と“個”、そのどちらも大事にしたいと思っています。」と小谷副園長は話してくれました。

そうこうしているうちに、あっという間に昼食の時間となりました。昼食は皆さんたちと同じ食堂で頂きました。どの方も、先ほどの作業活動中の緊張感から解放されたような、リラックスした表情をしています。「活動」と「余暇」のメリハリも、ここ『ワークショップはこだて』の魅力の一つなのでしょう。

函館青年寮通所部

函館青年寮通所部

本日、最後の訪問先は『函館青年寮通所部』です。ここでは以前より作業活動に拠らない日中活動を提供しています。定員は20名、利用者は在宅の方たちがメインだそうです。創作(タイル画、陶芸等)やレクリエーション、機能維持を目的とした各種運動が主な活動種目で、そのメニューは日替わりとなっています。先ほどの『ワークショップはこだて』で「多様化するニーズに…」との話題がありましたが、石川地区全体としてはその回答の一つとして、平成の時代に入って間もなく、この『函館青年寮通所部』が開設されたそうです。利用者の方たちは、先ほどの『ワークショップはこだて』の方たちと比べて、総じて支援の度合いが高そうなイメージです。職員の方たちも、ほぼマンツーマンで直接支援を行っています。

午後、私たちは休む間もなく(けっこうハードな日程なのです!)、プール活動にご一緒させていただくことになりました。準備を済ませて、施設のバスに乗り込みます。「プールに入るなんて何年ぶりだろう…」と、私たちが少々不安になるのを余所に、利用者の方たちの表情は誰もが笑顔です。20分ほどで市内千代台町にある函館市民プールに到着しました。プールサイドには『函館青年寮通所部』のプール活動を支える9人もの水泳指導ボランティアさんが待ってくれていました。中には20年近く(!)活動に関わる方もいらっしゃるようで、頭が下がると同時に、同じコロニーの職員として感謝の気持ちでいっぱいになりました。また、一方で「どうしてこんなに長く出来るのだろう」との問いが頭を巡りました。それは、利用者の方たちとプールの中に入って一緒に泳ぐことを通して、何となくではありますが、理解できるような気がしてきました。泳ぐことを心から楽しんでいる方、自分なりの泳ぎ方で一メートルでも前に進もうと一生懸命な方、マイペースに水と戯れている方、どの方たちもとにかく個性があって魅力的なのです。私も途中、鼻から水が入ってむせ込んでしまいましたが、気付いたら取材を忘れるほど、利用者の方たちと一緒に泳ぎを楽しんでいたのでした。

最後になりますが、『函館青年寮通所部』には『にじ』という部門があります。元々は独立した事業で『デイケアセンターにじ(重症心身障害児者通園事業B型)』として運営されてきました。しかし、平成24年の「児童福祉法」等の改正により、成人利用者については「障害者自立支援法」の障害福祉サービス(生活介護等)の対象となり、『函館青年寮通所部』に編入することになったそうです。利用される方の多くは、知的にも身体的にも非常に重い障がいがあり、看護師による医療管理が欠かせません。こうした方たちが通うことの出来る福祉サービス事業所は、函館市内でも数えるほどしか無く、『にじ』は「どんなに重い障がいがあっても、家から通って仲間と集い、活動出来る場所」となれるよう、一日5名程度の人数で活動を営んでいるようです。

プールで体験取材したこともあって、夕方に取材を終える頃には少々疲れを感じましたが、それが吹き飛ぶくらいの良い経験をさせて頂けたことを感謝したいと思います。「特に印象に残ったことは」と問われれば、今日伺った事業所同士の「連携」であったり、「補完」し合う姿勢かもしれません。行く先々で、そうした一体感を感じる場面が多くありました。福祉の仕事は、協力し合ってこそ良いものになることを身をもって学ぶことの出来た一日となりました。ありがとうございました。

函館青年寮

事業種別:障害者支援施設

開設:昭和50年

定員:40名/短期入所2名

ワークショップはこだて

事業種別:多機能型事業所

開設:平成2年

定員:50名(生活介護40名/就労B型10名)

函館青年寮通所部

事業種別:生活介護事業所

開設:平成2年

定員:20名

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