おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2014年9月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.3


函館青年寮 岩田・侑ハウス 廣瀬

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

今回の訪問先は、当別地区(北斗市)にある『新生園』と『明生園』です。前者は、児童施設『おしま学園』の次のライフステージである「成人期」における支援を期待されて開設された、コロニー最初の成人(男性向け)施設です。後者は、『新生園』の開設から遅れること十ヶ月、女性を対象として開設されました。以来半世紀近くもの間、コロニーの入所型施設の礎として、その後の事業の広がりを支え続けて来た両施設の「今」を取材したいと思います。『新生園』では日中活動、『明生園』では暮らしの場面を中心に見せて頂ける、とのこと。楽しみです。

新生園

新生園

私(岩谷)が所属する『函館青年寮(函館市石川町)』から車で約三十分、今回の最初の訪問先である『新生園』に到着しました。年に数回は訪れる当別地区ですが、「ゆうあいの郷」の一番奥にある同園の敷地内に入る機会は滅多に無く、おそらく五年前にコロニーに入職してすぐに受講した「新任職員研修会」の施設見学会以来だと思います。

到着後、まず岩田課長から施設の概要について説明して頂きながら、生活棟の1寮から5寮まで外観を中心にして見学させてもらいました。現在の利用者数は86名(8/1現在)。平均年齢は47.5歳、最高齢の方は71歳。元々の障がいの重さに加えて、加齢による影響で身体機能の低下が著しい人も年々増えているそうです。そこで『新生園』では、平成21年度の新事業体系移行[※①]を契機に、そうした多様化するニーズに応えつつ、支援そのものの質を高めることを目的とした、日中活動体制の見直し、及び再整備を行っているそうです。現在は、従来の作業活動をメインとした「ワークセンター大地」、そして多様な活動メニューを用意する「デイセンターおおぞら」の二つが、大きな柱となっています。開設以来「働く」ことを通じた「社会自立」を大きなテーマにしてきた『新生園』ですが、四、五年前からは、「多様な活動を必要とする」方の数が、「働く」方の数を上回るようになっているそうです。

最初に「デイセンターおおぞら」の各活動を見学させてもらいました。現在、活動種は八種類(創作、軽作業、機能訓練、環境整備、等)と多くあり、今回の紙面では全てをご紹介出来ないため、特に印象に残った「機能訓練」と「陶芸」をご紹介いたします。

まず「機能訓練」です。活動場所は機能訓練棟にあります。陽の光に照らされた明るい室内で、利用者の方たちは器具(エアロバイク他)トレーニングや、セラピーマットの上でストレッチ体操を行っていました。現在は『おしま地域療育センター』の理学療法士の指導を受けているそうです。また、同センターの高橋所長から提案された「楽しみながら行うことの出来るリハビリメニュー」というのもあるそうですが、利用者の方たちの明るく柔和な表情からは「辛く、苦しいリハビリ」というイメージを全く受けません。リハビリそのものを楽しんでいる全体の雰囲気に、こちらの気分も爽やかになるのを感じました。

次は「陶芸」です。こちらはその活動の様子がNHK函館でも取り上げられたことのある、『新生園』の数ある活動種の中でも最も「旬」なものの一つです。この「ゆうあい」でも記事にしましたが、「みんなあーと2013」[※②]では大賞を始め数々の賞を手にしました。それらの作品群は『ギャラリーこだま』に展示されています。ちなみに、このウッド調のかわいい建物、職員の手作り(!)だそうです。広さはわずか3坪ですが、建物の中はとっても素敵な空間が演出されていました。中でも目を引いたのは成田信之さんの作品。絵には「猫」や「女の人」が多く描かれています。岩田課長の説明によると、「猫」は数年前まで施設で飼っていた猫、「女の人」はお母様だそうです。作品からは、それらを慕う成田さんの愛情が、ストーリーを伴って圧倒的かつストレートな表現で迫ってきます。芸術に疎い私でも、心に熱いものがこみ上げます。その後、工房に移動しました。いました…!成田さんもいらっしゃいました。声をかけましたが、初対面の相手とやりとりするのは、少し苦手にしていらっしゃる様子が窺えました。シャイな成田さんにとって、これらの作品は、声にならない「心」の表現なのかもしれないと思いました。同時に、成田さんを始め利用者の方たちの思い思いの「表現」を、「作品」にまで昇華させることが出来るのは、支援員の力量や感性によるものだろう、と感心せずにはいられませんでした。皆さん、当別地区に行く機会がありましたら、どうぞ『ギャラリーこだま』に足をお運びくださいませ。きっと心に響く作者や作品との出会いが待っていることでしょう。小さい建物なので、くれぐれも見落としにはご注意を。

次は「ワークセンター大地」に向かいました。活動内容は、「身欠き鰊(にしん)箱」などの製函(箱の製造のこと)作業です。私が所属する『函館青年寮』のある石川地区で行っていた時代を含めると三十年近くコロニー成人利用者の作業を支えてきたことになります。二年前にそれまでの請負作業(下請け)から独立して、「製材」から「販売」まで一貫生産体制を敷くことによって、作業規模は拡大しました。現在は「仕組み部」、「粉砕部」、「組立部」で構成されています。まず最初に、昨年の10月に完成したばかりの新しい作業棟に案内されました。そこでは「仕組み部」が、仕入れ材の乾燥から製材、結束、裁断等の作業を行っていました。真新しい建物ということもあって、中は衛生的で広々。水産加工業界や消費者ニーズの変化により、木製魚箱の需要は先細りしているイメージがありましたので「細々と続けているのかなぁ」なんて大変失礼な先入観がありましたが、その規模の大きさにびっくり。倉庫も見せていただきましたが、出荷を待つ在庫でびっしりです。見当が違っているかもしれませんが、コロニーの幾多ある作業種目の中でも『菌床きのこセンター』に次ぐくらいの規模かもしれないと、その迫力に圧倒されました。別の作業棟にある「組立部」では、利用者の方たちが整然と機械打ちを行っていました。利用者の多くは自閉症の方たちでしたが、その作業の正確さと手際の良さに目を奪われました。実際に、私たちも機械打ちの体験をさせて頂きましたが、見た目以上に熟練した技術が必要のようです。失敗作を作る私の横で、利用者の方たちは唖然とするほどの速さで、次から次へと寸分違わぬ製品を仕上げているのでした。

見学を終えた私たちは、利用者の方たちと一緒に食堂で昼食を頂きました。岩田課長から「うちの味はちょっと自慢だよ」と教えて頂きましたが、なるほど。利用者の方たちの午後からの活動への活力に繋がるであろう美味しさでした。

(函館青年寮 岩谷)

明生園

明生園"

午後は『明生園』を訪問しました。ご存じのとおり利用する方は全て女性です。周囲の職員を見ても、女性職員が殆どです。介護支援が必要な方が増えていると伺っているので、同性介護の視点からも肯けます。一方、私(廣瀬)が所属する『侑ハウス』の利用者は全て男性であるため、普段女性の利用者と関わる場面はまずありません。女性ならではの支援や配慮、またどんな工夫をされているのか興味があります。

見学案内は加藤課長にして頂きました。まず利用者の方たちの状態像について伺いました。現在の利用者数は50名(8/1現在)。平均年齢は48歳を超え、『新生園』と同様、高齢化に伴う支援課題が大きくクローズアップされているようです。身体機能の低下が著しく、介護支援や細やかな健康管理を必要とする利用者の方の割合は、先ほどの『新生園』よりも『明生園』の方が多い印象を受けました。そうした支援度の高い方たちの介護ニーズや医療ニーズに対応出来るよう、昨年の4月新棟「あさひ寮」が完成しました。従来の「ひかり寮」、「やまびこ寮」、「あずさ寮」のある本棟と渡り廊下で繋がっています。中には、車椅子や歩行器を使う方が多くいらっしゃいました。当然、バリアフリー環境で、造りもゆったりとした落ち着いた雰囲気の空間となっています。広々としたリビングのようなデイルームには、色鮮やかな掲示物や、所々に可愛らしい装飾が飾り付けてありました。この辺りは、女性ならではの視点やセンスを感じます。利用者の方たちはそうした環境の中、思い思いにリラックスしてくつろいでいらっしゃいました。居室(全て個室)も見せていただきました。最新式の「緊急コール」や「離床センサー」などが設置され、プライバシーのある「快適」な生活空間と、「安全安心」の空間がしっかりと同居していることに感心いたしました。

次に、日中活動を見学させて頂きました。「手工班」、「トレーニンググループ」と二つの活動グループがあり、利用者の方たちの希望や心身の状況に応じて構成されています。「手工班」では『明生園』伝統の「とうもろこし人形」が作成されています。コロニーの要覧などによく見るあの人形です。屋外では、人形の材料となる、とうもろこしの皮の選別、及び乾燥作業が行われていました。ブルーシートの上で山になった皮の中から、人形の材料に適したものを選んでいくそうです。愛くるしい個性的な人形たちは『花びしホテル(函館市湯川町)』や『函館市民の森売店(函館市上湯川町)』などでお求めできます。最後に「トレーニンググループ」に移動しました。ここでは、個別に用意された「ビーズ通し」等の自立課題や各種生きがい活動等が行われていました。突然の訪問客である私たちを歓迎してくれ、明るく声をかけて下さる方がいらっしゃいました。後でその方のお歳を伺ったところ、園の最高齢(74歳)のお二人とのこと。お二人だけでなく、皆さん、楽しそうにおしゃべりに興じながらも、一人ひとりにあった活動が行われていることが分かりました。どの方も明るく、笑顔だったのが印象に残りました。

両園とも、開設以来受け継がれている伝統を大切にしながらも、変わる利用者のニーズや社会的要請に、柔軟に応えていこうとする真摯な姿勢を感じ取ることが出来ました。紙面には書ききれない多くのことを学ぶことの出来た一日となりました。本当にありがとうございました。


(侑ハウス 廣瀬)


[※①]障害者自立支援法に定める新体系サービスへの移行(平成24年3月期限)

[※②]毎年秋に札幌で開催される「障がい者芸術祭」。全道から作品を募集する。

新生園

事業種別:障害者支援施設

開設:昭和43年

定員:90名
    短期入所3名

明生園

事業種別:障害者支援施設

開設:昭和43年

定員:50名
    短期入所2名

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