おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2014年8月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.2


      おしま学園 田中・村上

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

前回の「訪問記」では、当別地区(北斗市)の三事業所を取材しました。今回訪問する四つの事業所は、当別地区から20kmほど函館市寄りにある七重浜追分地区(北斗市)にあります。いずれも対象としているのは幼(乳)児期のお子さんたち。どんな出会いや学びがあるのか楽しみです。

ゆうあい幼稚園

ゆうあい幼稚園

到着後、大場園長の案内で建物内の見学をして周りながら、各クラスについての説明を受けました。ちょうど園児たちの登園時間と重なり、これから一日がスタートする期待やわくわく感が子どもたちの顔から見て取れました。どの子も元気で、とても賑やか!朝の会までは自由時間とあって、子どもたちはクラスに関係なく行き来(異年齢児交流を意図的に図る建物構造)しては、様々な遊びに興じていました。そうこうしているうちに、通園バスも到着して子どもの数は倍増。混雑がピークに達したかのように思えたその時、先生が教室の前で歌いながら手遊びを始めました。すると子どもたちは速やかに遊び道具の片付けを済ませて、あっという間に自分の席に着席して先生に向かって整列したのでした。「…今、何か魔法を使いましたか?」と、聞いてみたくなるほど一瞬にして「秩序」が生まれたのでした。子どもたちをまとめる力、引きつける技に、ビックリするやら、感動するやらで「幼稚園の先生ってスゴイ…」ととても感心させられた場面でした。

その後、大場園長から園の現状や課題などについてお話をいただきました。「子どもたちは、遊びを通じて社会ルールやマナーを身につけていきます。また、相手を思いやる気持ちや自分を表現する伝え方などを学ぶこともとても大切なことです。また色々な学び方をする人がいることを知るのも大事です。そうした幼少期における適切な保育は、これからの人格形成の礎となっていきます。」と話してくれました。また、幼稚園に求められるニーズや期待は時代と共に移り変わり、それに応じて取り組みも多様化している(満3歳児からの受入、休日保育など)、とのことでした。しかし、どう時代が変わろうと『ゆうあい幼稚園』のモットーである「一人ひとりを大切に」というテーマは受け継がれていくことだろうと感じました。先生たちと子どもたちの笑顔が、何よりもそれを物語っているように思えたのでした。

つくしんぼ学級

つくしんぼ学級

次に訪問したのは、『ゆうあい幼稚園』のすぐ隣の敷地にある『つくしんぼ学級』です。私たちが勤める『おしま学園』にも、『つくしんぼ学級』の卒園生がいます。今回の「訪問記」で、私たちが普段支援する方たちが通っていた事業所を訪れることが出来るのは、とても貴重な機会と感じていました。

見学説明は金沢園長がして下さいました。現在の建物に移転改築したのは平成16年のこと。「子どもたちに分かりやすい」建物にするために、様々なアイデアや工夫を取り入れた、とのことでした。例えば、建物内で一番先に案内された正面玄関。旧園舎は、送迎バスを降車してから正面玄関にたどり着くまで、多くの遊具がある園庭やアプローチを通らなければいけませんでした。それらの刺激は、時に移動時の支障となっていました。そこで新園舎の正面玄関は、送迎バスを降車してすぐ視界に入り、スムーズに登園できるような位置に設置したそうです。

次にクラスの園庭に移動しました。初夏の爽やかな青空の下、子どもたちが伸び伸びとプール遊びをしていました。ちょうどその時、一人の子どもが他の子どもに頭から水をかけてしまいました。金沢園長はすぐさま、水をかけた子が「ごめんなさい」と言えるように優しく促して、自然に謝ることが出来るようなきっかけを作りました。そして、その子が謝ることが出来ると、今度は大袈裟とも取れるようなアクションで「よく謝ることが出来たね!」と褒めていらっしゃいました。また、この日、体調不良のためプールに入れない子が一人いました。当初の予定では、その子のスケジュールには他の子と同じようにプール活動が組まれていました。しかし、通園バスに乗車したその子の連絡帳で体調不良を知った職員はすぐに園に電話連絡、プール活動の中止を指示しました。その子が登園する前にスケジュールを変更したことにより、プール活動は最初から予定されていなかったことになり「楽しみにしていたプールが中止になっちゃった…」という否定的体験は避けられることになりました。金沢園長は「叱ったり、否定するような関わりは可能な限りせずに、褒めたり肯定的な表現で自信を育んであげていくことが成長につながると思うんです」と説明してくれました。肯定的体験の積み重ねの重視、自主性や積極性を引き出す関わり、職員間による支援の狙いの共有、及び連携体制の徹底など、園で大切にしている療育方針の一端を垣間見た気がしました。

保育室の中は、どのクラスも物理的構造化によって子どもたち一人ひとりの活動スペース、物の位置、動線などが分かりやすいように整理、工夫されていました。また、「いつ」「どこで」「何を」等の情報を伝えるスケジュールが個別に細かく用意されていました。

次に、家族の部屋というスペースに案内されました。部屋には大きなテレビが設置され、各クラスに取り付けられたカメラを通して園内の子どもたちの様子が観られるようになっていました。家族と離れて過ごす時間を不安に感じるのは子どもばかりではありません。特に利用を始めたばかりのご家族の心配は察するに余りあります。そうしたご家族の心情に配慮された工夫をすると同時に、ご家族同士の交流を図る目的もあるそうです。

最後に、金沢園長に「園の方針で特に大切にしていることは何でしょうか」と伺いました。「ご家族と一緒にお子さんについての理解を深め、協力して療育を進めていきたいと思っています。ご家族がどんなことに悩み、困っているのかを共感的に捉えながら、どのように支援することで成長を促していくことが出来るのかを一緒に考えていきたいと思っています。」また、職員には「一人ひとりに合った、力を引き出す支援のあり方を大事にして欲しい。それを、ご家庭でも出来るよう分かりやすく伝える工夫や努力をして欲しい」と考えていらっしゃるそうです。

『つくしんぼ学級』の小さなパンフレットの片隅に「どうぞ、一人で悩まずに、いつでも、何でも、ご相談ください」とあります。ご家族と支援者が手を取り合って、一緒にお子さんの成長を促そうとする真摯な姿勢や温もりを知ることが出来ました。私たち『おしま学園』の職員も、『つくしんぼ学級』を見学して児童期を支援する事業所としての役割をもう一度考えさせられる今回の訪問となりました。

七重浜保育園

七重浜保育園

本日、三ヵ所目の訪問先は『七重浜保育園』です。ご存じのとおり、おしまコロニーの基となった保育園で、その開設は今から遡ること61年前、昭和28年のことでした。現在の園舎は、平成20年に移転改築した真新しい建物です。

併設されている子育て支援センターでは、情報提供や育児相談、子育てサークルの育成・支援など、相互の連携と協力を図っています。

訪れた時間帯がちょうどお昼時ということもあって、図々しくも私たちは園児たちと一緒に給食をいただくことになりました。園児たちは突然の珍客に興味津々、椅子に座った瞬間から質問攻め、自己紹介タイムとなりました。4歳児のクラスに入ったのですが、おしゃべり上手はやはり女の子。話に夢中になりすぎて食事が進まず、先生に「○○さん、お箸が止まってるよ〜」と言われ、慌てて食べ始めるお子さんもいました。

給食を食べ終えた後、西本園長に園内を案内していただきました。現在、0歳児から5歳児まで133名(7月現在)が在籍しているそうです。前回の「訪問記」でご紹介したとおり、『当別保育園』との交流保育が盛んです。近くの七重浜駅からJRで6駅(所要時間30分)、渡島当別駅で下車してすぐの『当別保育園』に向かいます。『七重浜保育園』にとっては「自然と触れ合う機会や遊びの場所を広げるため」、『当別保育園』は「在籍人数が少ないので、大きな集団での活動の機会を設けるため」、とお互いのニーズや特色を補完し合っているそうです。同じ法人内でのこうした交流の機会は、両園にとって非常に貴重なものとなっていることが窺えました。

おしまコロニーの出発点となった『七重浜保育園』は、故大場茂俊前理事長の「子どもは大事にするものだ」という精神が色濃く息づいていることが実感出来る素敵な保育園でした。

浜分保育園

浜分保育園

今日、最後の訪問先は『浜分保育園』です。見学案内は佐々木園長がして下さいました。一般的な保育事業の他にも、障がい児保育事業、延長保育促進事業、地域子育て支援拠点事業、等多数の特別保育事業を展開しているそうです。北斗市からの委託を受けて、別地域に児童クラブも設置しています。私たちが訪れた時には、医療ケアを必要とするお子さんがいました。2名の看護師や作業療法士がいるため、そうしたニーズのあるお子さんの受入も可能としているそうです。

『浜分保育園』を訪れてから、ずっと思っている印象がありました。それは、佐々木園長を筆頭に、どの職員も素敵な笑顔で接してくれることです。私たちの心も自然と晴れやかになります。当然、お子さんたちの前でもご家族の前でもその姿勢は変わることはありません。佐々木園長にそのことを伝えると「私たちの園には5つのモットーがあります。笑顔、元気、細やかさ、親しみやすさ、専門性です」と教えてくれました。モットーを守ろうとする姿勢は徹底しています。自己評価のみならず、年度末にはご家族に満足度調査を行って自らの襟元をチェックしているそうです。ちなみに「職員は笑顔で対応出来ていますか」の質問項目の満足度は、いつも大体99%(!)だそうです。対人援助の基本は笑顔であることを再確認しつつ、生活支援員である私たち自身のことを振り返り、反省しきり…の思いになりました。

その後、本園の向かいにあるログハウス風の温かみのある建物『分園もっく』に移動しました。未満児(0〜2歳)と休日保育のお子さんが遊んでいました。雰囲気は見た目の印象そのままにとても家庭的なものでした。2階には発達障がいのあるお子さんが活動出来るような個別スペースも用意されていました。

『浜分保育園』は、子どもたち一人ひとりやそのご家族のニーズや期待について、積極的な事業展開で応えようとする強い決意や熱い想いが感じられる場所でした。



 

足早に過ぎた一日でしたが、記事に書き切れないほどの多くのことを学ぶことが出来た貴重な機会となりました。ありがとうございました。

ゆうあい幼稚園

事業種別:幼稚園

開設:昭和50年

定員:160名

つくしんぼ学級

事業種別:児童発達支援センター

開設:昭和50年

定員:40名

七重浜保育園

事業種別:保育所

開設:昭和28年

定員:120名

浜分保育園

事業種別:保育所

開設:昭和55年

定員:120名

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