おしまコロニーの機関誌「ゆうあい」は、毎月、御家族の方々をはじめ、全国各地の施設・関係機関、団体等に配布されております。多くの方々の寄稿文、実践活動やイベント、エピソードなどを交え、みなさまに近況をお伝えしております。

 

2014年7月号


ゆうあい編集委員が行く!訪問記 Vol.1


      星が丘寮 松川・鈴木

おしまコロニーの出発は今から47年前の昭和42年のことでした。海に山が迫った海岸線を函館から西に30kmほと辿った上磯町(当時)当別の地に、知的障がいのある子どもたちの施設『おしま学園』を開設しました。以来、いかなる世代の人たちでも支援を受けることが出来る体制の構築を目指し、現在その事業所の数はグループホーム等の小規模なものも含めると80カ所を数える、国内でも有数の規模を持つ法人となりました。それは「器」としての施設を超えて、施設の持つ「支えとしての機能」を柔軟に組み合わせ、様々なニーズに多面的に応じていくための歩みの結果と言えるのかもしれません。この「つながり」こそが、おしまコロニー固有の大切な財産となり、その存在証明となっていきました。新しい企画「訪問記」では、ゆうあい編集委員が、この「つながり」を確認、また再発見するための取材に出かけます。ご期待下さい。



 

緊張して迎えた取材当日の朝、抜けるように澄み切った青空が広がっていました。今日伺う三つの訪問先はいずれもおしまコロニー当別地区にあります。一つ目の訪問先は『当別保育園』。私たちが普段支援する成人期の利用者と、対象としては全く異なる幼少期の子供たちの取材からスタートを切ることになりました。

少々の不安と戸惑いを感じつつも、新鮮な気持ちもありました。

当別保育園

当別保育園

『星が丘寮』を出発して車で3分、『当別保育園』に到着しました。園児たちは園庭でラジオ体操の真っ只中。先生の掛け声に合わせて、太陽に向かって大きく腕を振る園児たちは元気いっぱいでした。この後、園庭で陸稲植え(おかぼうえ)という田植えをすることになり、私たちも腕をまくって仲間に入れてもらうことになりました。園児一人ひとり先生から苗を受け取り、土に指で穴を開けてそっと苗を置き、やさしく土をかぶせます。これが、簡単そうで難しい。苗が中々垂直に立ちません。土で固めてしまう子もいました。事前に「服装に留意して下さい」と話されていましたが、「…なるほど」作業を終える頃には園児も私たちも泥だらけになっていました。

その後、園舎裏のベランダに案内されました。そこには海を一望できる素晴らしい景色が広がっていました。その海を臨む斜面には、とうきび、にんじん、ズッキーニ、じゃがいも等を育てる畑がありました。『七重浜保育園』の園児たちも度々この畑に訪れて、これらの野菜を育てているそうです。また、畑の手前には大きな一輪の草がありました。”ニオウ”という植物で、キアゲハが卵を産むのだそうです。園児たちは卵が孵化して幼虫からさなぎ、蝶になるまでを観察しているとのことでした。

この日案内して下さった杉本主任によると、定員20名のところ現在の在籍数は10名。「もう少し人数が多くて賑やかだと良いのにと思うこともあります。しかし、地域との深い繋がりや、山と海に囲まれた抜群の自然環境などここにしかない良さがあります。そして何より少人数だからこそ可能になるきめの細かい保育ができます。」と話してくれました。取材した当日も『石別中学校』の生徒が職業体験で訪れていました。また保育園に併設する石別児童(放課後)クラブに登録する『石別小学校』の生徒が普段から行事に参加したり、畑仕事を手伝ってくれているそうです。こうした異年齢児交流や地域ぐるみの世代間交流など、豊かな人的交流の機会や社会経験は園児たちの成長に欠かせないものとなっていることが窺えました。

『当別保育園』は、四季折々の自然を体感できる恵まれた環境でありつつ、地域まるごと家族のような温かい雰囲気に包まれた所でした。

七飯養護学校おしま学園分校

七飯養護学校おしま学園分校

次に私たちは『七飯養護学校おしま学園分校(以下、分校)』を訪問しました。同じ当別地区に位置するため普段から外観は見慣れていましたが、中に入ってびっくり「…広い、迷子になりそう」。当たり前ですが、まさに”学校そのもの”でした。開校は、養護学校が義務化された昭和54年。それ以前は『石別小学校・石別中学校』の分教室がその役割を担っていたそうです。現在の生徒の数は42名(小学生7名、中学生15名、高校生20名)。その多くは『おしま学園』から通っています。生徒の8割近くが自閉症の方で占められているそうです。『当別保育園』の卒園生もいるそうです。

案内は吉野教頭にしていただきました。生徒の方たちは様々な活動に取り組んでいました。紙すきからハガキサイズの紙の制作、ブックカバーやコースター作成、キャンドル制作、等々。どの教室でも、一人ひとりの特性に合わせたスケジュール、ワークシステム、視覚的構造化が行われていました。成人の自閉症施設に勤務する私たち2人にとっては見ること聞くこと全てがとても興味深く、勉強になることが多くありました。吉野教頭は「学びがゆっくりしている方たちなので、成果を上げるには時間も必要ですが、一人ひとりの意欲や自立的行動を引き出す肯定的な指導を心がけています」と説明してくれました。体育館では間近に控えた体育発表会の練習が行われており、しばらく見学させていただきました。また、体育館を出た廊下には毎日の献立表が掲示されていました。写真入りで見た目にもとても楽しい工夫がされており「これなら毎日の昼食がより楽しみになることだろうな」と思って感心させられました。

吉野教頭はお忙しい中、ほぼ校内全ての教室や活動を案内してくれました。最後に感想を申し上げつつお話をいただきました。「今日ご覧になった手厚い指導や支援方法は、人や環境に恵まれた学校だからこそ可能なのかもしれません。だからこそその役割を自覚して、社会に出た時の土台となるような技能や態度の習得、コミュニケーションのあり方を育んであげたい。これから卒業後の進路に頭を悩ませる時期となります。できれば障がいのある方一人ひとりの力を発揮させる支援環境が整うおしまコロニー内の事業所を希望したいと思うのですが、定員の課題が大きく難しいことも多い。特に支援度の高い人にとっては、福祉施設であればどこでも同じ支援を提供してくれるわけではない現実が頭の痛いところです。これからも学校の役割を果たすために頑張ります!チャレンジです!」

おしま学園

おしま学園

最後に、『おしま学園』を訪れました。『分校』に通っていた生徒の方たちが丁度帰寮する時間帯であり、職員の皆さん達の忙しさが伝わってきました。この忙しさ、慌ただしさは自分自身が所属する寮と雰囲気が似ており「やはりこの時間(15時ころ)というのはどこも忙しいものなのか」と感じました。案内は井出課長がして下さいました。3つの寮『のびやか(12名)』、『すこやか(13名)』、『さわやか(13名)』を見学することが出来ました。見学しながら、各寮ごとの「違い」を感じましたので、いくつか質問をしてみました。


編集委員:各々の寮で暮らす利用児童の方たちの状態像に違いがあるように感じました。寮を編成する上で、どのような配慮を心がけているのでしょうか?

井出課長:『のびやか』、『すこやか』には多くの面で支援を必要とする子どもたちを中心に構成されています。一方『さわやか』には、ある程度自立的に行動することができる子どもたちを中心に構成されています。子どもたち同士でコミュニケーションを取り合い、いくつもの関係性の中でお互いの意見を聞きながら、自立心や自主性を育むことも大事なのです

編集委員:先ほど『分校』に訪問しました。「暮らし」と「日中」で同じ児童の方たちを支援(学校指導)するというところで、どのような連携を普段図っているのでしょうか。また、共同作業や、お互い学び合うような取り組み等はあるのでしょうか?

井出課長:毎月、『分校』と『おしま学園』との間で定例の連絡会議の場を設けています。また、連絡・連携の部分では、日々の引き継ぎを基本としながら、互いに担当する子どもについての懇談を年間2回行っています。もちろん、『分校』と保護者の懇談会もありますが、その席に寮の職員も参加させてもらい、三者懇談のスタイルになることもあります。高等部3年生の進路を考えていく際には、『分校』と『おしま学園』それぞれの担当者が連絡を取り合って話し合いを行っています。


他にも、『分校』から案内される授業参観では、期間が1〜2週間設定されているので、寮職員が交代で授業の様子を参観し、時には相談し合ったりしているそうです。



 

今回は当別地区の三事業所を訪問させていただきました。普段、同じ法人の事業所でありながらも、訪れる機会は多くはありません。そういう意味でも、今回の訪問記での取材は、とても貴重な機会となりました。それぞれの事業所で担う役割は違いますが、利用者の方たちの様々なニーズに応えるためには、より専門的な知識が必要であることを最後に強く感じました。

当別保育園

事業種別:保育所

開設:昭和41年

定員:20名

七飯養護学校おしま学園分校

開校:昭和54年

学級編成:小学部(7名)・中学部(15名)・高等部(20名)

おしま学園

事業種別:障害児入所施設

開設:昭和42年

定員:40名

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